交渉② ゲーム理論(26)
4.瀬戸際作戦とスト
交渉では待ちのコストが小さい方が有利
⇒双方とも自分の待ちのコストを小さく見せたい。
待ちのコストが小さいことを証明するためには、どうすればいいか?
実際にコストを発生させてそれに長く耐えられるところを示すか、コストを発生させる恐れのあるリスクを取って見せる。
交渉の結末について両者の見通しが異なるとき、ストが起きる。
瀬戸際戦略(小規模な脅しから初めて、段階を追ってそれを強化していく)
~交渉決裂による被害の小さいほうにとって武器となる戦略。
契約が切れてもストに入らず、従来の契約条件のまま業務を続けながら交渉
⇒経営側にとっては、交渉を空回りさせておいたほうが得。
ストになる可能性があるからこそ、経営側は脅威を感じる。
⇒組合はストの可能性を排除しないことにより、経営側を妥協に向かわせる環境を作るべき。
瀬戸際作戦
~
対立が長引くにつれて損失が発生する確率が確実に増加していく。
この確率の増加に耐えられなくなった側が譲歩をする。
スト(もう1日、あと1週間働かない)は、大きい損失が小さい確率で発生するのではなく、小さな損失が大きい確率で発生する状況をつくりだす。
強い決意を示すためには、ストによる損失が膨らんでいくのを容認する必要がある。
相手のほうが強いとどちらかが理解したときに、弱い方が譲歩する。
瀬戸際作戦を用いると、交渉の性格がまったく変わってしまう。
瀬戸際作戦ではときどき実際に瀬戸際を越えてしまい、決裂やストが起きる可能性を排除できない。いったんそうなると、はずみがついて簡単には終わらない。
5.複数事項の同時交渉
労使間の交渉事項は賃金だけではなく、健康保険、年金、労働環境等多岐に及ぶ。
両者が認める価値の違いから換算後の金額に大きな差が生じる場合もある。
ex.労働者が個人で健康保険に加入すると1人2000ドルの保険料
会社がまとめて団体健康保険制度をつくれば1人当たり1000ドルで済む
⇒組合にとっては賃金の1500ドルアップより団体健康保険の創設が望ましい
会社にとっても賃金の1500ドルアップより団体健康保険のほうがよい。
すべての交渉事項を同じ土俵に上げ、相対的な価値の差を見つけ出して、皆にとってよりよい決着を図る。
WTOは、幅広い品目をテーブルに載せることで、個別品目ごとの交渉より大きな成果を上げている。
複数の争点をまとめて議論する場合、1つの交渉のゲームを利用して、別のゲームで相手に脅しを与えることが可能になる。
米国が日本との市場開放の交渉で、軍事的な関係も含めて交渉を行い、北朝鮮や中国の脅威をちらつかせれば、日本の譲歩を引き出しやすい。日本側は、経済問題と軍事問題を別々に交渉することを主張。
6.バーチャル・ストライキ
交渉が決裂すれば、当事者以外に影響が及ぶ場合がある。
しかし、交渉当事者は、自分のBATNAの大きさをアピールし、相手から譲歩を引き出すために、しばしば交渉を打ち切ってしまう。
ストにより第三者に及ぶとばっちりが労使の争っている金額を軽く上回る場合も珍しくない。
ストやロックアウトによる第三者の損失をほぼなくし、しかもストやロックアウトを行う場合そのままの両者の交渉上の力関係をあぶり出して、同じ結果を生み出す賢明な方法。=バーチャル・ストライキ(バーチャル・ロックアウト)
バーチャル・ストライキ:
従業員は無給で働き、会社は利益を放棄する。労使の放棄する報酬は、国庫に納めてもいいし、慈善団体などに寄付してもいい。商品やサービスを無料にしてもいい。
~
当事者以外にとばっちりは及ばない。
労働組合と経営者は痛みをこうむるので合意に達したいと考えるが、政府や慈善団体や顧客は得をする。
ファン離れを招いたNHLのロックアウトととは対照的に、イタリアの運輸労働組合のバーチャル・ストライキはブランドの評判を高める役に立った。
労働者は無給で働く
←経営者側に痛みを与えると同時に、自分たちにとって「待つ」コストが大きくないことをアピールする。
バーチャル・ストライキの間、労働者は普段より一層一生懸命働く。
←その期間の売上が増えれば増えるほど、経営者の痛みを大きくできる。
7.ケーススタディー:もらうよりやるほうがよい
毎日1回だけ経営者が条件提示を行い、組合側が受け入れるか拒否するかを決める。
組合側が提示を受け入れるか、シーズンが終わるまで、交渉は続く。
経営側のとるべき行動は、組合側が給与ゼロよりまだましとして受け入れる最低水準を見定めて、その額を提示すること。
たとえば、最後の段階で組合側が組合=200ドル、経営=800ドルという配分を何もないよりはましと受け入れるのであれば、経営側はこの1対4という比率を101日間にわたって固定し、全体利益の3分の2を得ればいい。
先読み推量をすることによって、半々でない配分がなぜ起こるかが説明できる。
とくに、一方が提示を行う場合には、提示は「もらうよりやるほうがよい」ことがわかる。
1回きりのゲームと繰り返し型のゲームは違う。
「受けるか拒むか」型のゲームを繰り返す場合、被提案者は、最初にあえて強気な態度を見せつけることを通じて、自分が先読み推量による合理的な判断をくだすわけではない(あるいは、半分ずつに分割すべきだと信じて疑わない)のだと提案者に思わせることに成功すれば、有利な提案を引き出せるかもしれない。
ゲームは2日間。
最初に67対33の分割を提案し、相手が突っぱねた。
最初にイエスといっておけば、相手は330×2=660ドル>500ドルを受け取れる。
相手にとっては、思惑どおりにことが運んでも、最初の提案を受け入れるより結果が悪い⇒相手が提案を拒んだのははったりではない可能性がある⇒最終ラウンドで50対50を提案した方がいいかもしれない。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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