相手の行動を観察せよ・・・情報の解釈・操作③ ゲーム理論(18)
9.信号を発しないことの落とし穴
誰かが信号を発しないという事実もある種の情報を伝えている。
ex.セールスポイントを伝達する機会があるのにそれをしない⇒好ましい資質をもっていないと判断される。
優秀な成績をとる自信のある学生は、差別化をはかれる5段階評価の従業を履修⇒合格・不合格の授業をとるということは実力がないということ。
10.ホンモノは信号を発しない?
卓越した才能をもつ人の中には、あえて信号を発しない人もいる。
成金:富をひけらかす
古くからの資産家:そうした見苦しい行為を軽蔑する
下っ端役人:権威を振りかざす
真の大物:威厳ある態度を通じて権力を印づける
月並みの教育しか受けていない人:いかにも学がありそうに几帳面な字を書こうとする
本当に高度な教育を受けた人:判読不能な字を書くことが多い
信号を発する⇒その信号を発することのできないタイプの人達との差別化を望んでいるという信号にほかならない⇒信号を発する必要がないという信号を発することこそ、最強の信号である場合もある。
博士号自体はどの教授も持っている。しかし、学位を念押しすると、自分を他人と差別化する必要性を感じているという印象を与える。
本物の大物教授は、あえて信号を発しないことにより、「自分は信号を発する必要がないくらい有名だ」というメッセージを送れる。
11.妨害信号
あらゆるタイプの人が同じ行動を取るので、その行動はまったく情報を与えなくなってしまう。「一括均衡」
その人のタイプによって発する信号が異なり、その信号によってその人のタイプが識別できる状況。「分離均衡」
行動は識別に役立つ情報を部分的にしか伝達しない場合。「半分離均衡」
車を乱雑に扱っている売り手の1人がミックス戦略を実践し、半分以上の確率で掃除をするが、常に掃除をするわけではない。
⇒きれいに掃除してある中古車の売り手のなかには、車を大事に扱ってきた人と乱暴に扱ってきた人の両方が含まれる。
買い手がどういう態度をとるべきかは、売り手のミックス比率次第。
買い手としては、乱暴な売り手が車を掃除してから売りに出そうと、車を掃除せずに売りに出そうと、売り手の損得に違いが出ないように振る舞う必要がある。
12.嘘という名のボディーガード ウィンストン・チャーチル:
「戦争中には、真実はきわめて貴重なものなので、常に嘘という名のボディーガードを付き添わせなければならない」
相手の裏をかくためにわざと本当のことを言うものである場合も多い。
ミックス戦略を実践する場合、相手をいつもだますことは不可能。
相手に常に推測させ続け、ある程度の割合でだませればよしとしなければならない。
相手がミックス戦略を実践している可能性⇒相手の言葉をすべて額面どおりに信じるのもよくないし、嘘を言っていると決めつけるのもよくない。
相手がなにを言っても無視するのが一番かもしれない。
言葉より多くを物語るのは実際の行動。
相手の行動を観察すれば、相手のミックス比率を推測できる。
ポーカーで上手なプレーヤーは、一定のパターンに従って行動することを避け、無作為に振る舞う。ときには、あえて定石に反する行為すらとる。
最善の戦略は、はったりをかける場合とはったりをかけない場合をミックスすること。
13.価格差別という選別戦略
日常生活で選別の戦略が最も大きな意味をもつのは、商品やサービスの売り手が価格差別を行う場合。
財布のヒモが固い人には割引をし、あっさり高額を支払う人には割引をしない。
売り手がよく用いる方法:
同じ商品を複数のバージョンでつくり、それぞれに異なる価格を付ける。
⇒買い手の非公開情報(購入意欲の強さ)を間接的にあぶり出す。
ex.
①
まずハードカバーで出版。後でペーパーバックで再度売り出す。
コスト差は価格差に比べてはるかに小さい。
②
ソフトウェアの「ライト版」、「学生版」
~高く払ってもいいと思っているユーザーには高い値段でうる一方、安くないと買わないユーザーも獲得。
③
IBMのプリンターの低速バージョンと高速バージョン。
低速バージョンは、印刷速度を遅くするために、わざわざチップを機械に組み込んだ。
~
企業は選別の戦略を実行する目的で、わざわざ時間と手間をかけて機能を制限したバージョンの製品を作る場合もある。
航空会社の料金設定:
ビジネス客~高い料金を払うことに抵抗がない
⇒
割引料金で一般旅行客を獲得して利益をあげつつ、
ビジネス客からは従来通りの料金を手にする
⇒
同じフライトに別バージョンを設けて料金も別々に設定し、ビジネス客と一般旅行客が異なるバージョンを選択するように仕向ける。
ビジネス客:エコノミーに225ドル ファーストに300ドル 払ってもいい
一般客:エコノミーに140ドル ファーストに175ドル 払ってもいい
コスト:エコノミー100ドル ファースト150ドル
30%がビジネス客、70%が一般旅行客。
ビジネス客にはファーストクラスのチケットを売った(300ドル)方が儲かり(利益150ドル)、
一般旅行客にはエコノミークラスのチケットを売った(140ドル)方が儲かる(利益40ドル)。
ビジネス客:140ドルのエコノミークラスに切り替えれば(エコノミークラスには225ドル払うつもりだったので)85ドルお金が浮く計算。「消費者余剰」
⇒ビジネス客がファーストクラスに乗ってもエコノミークラスと同等の消費者余剰が得られるようにしなければならない。
⇒ファーストクラスは300ドルから85ドルを指しいひた215ドルとなる。
ビジネス客が一般旅行客向けのサービスに転向しないための誘因を与えるようにファーストクラスの料金を抑える必要がある。「誘因両立制約」
エコノミークラスの料金を引き上げれば、ファーストクラスの料金を215ドルより高く設定できる。
but
その場合は、エコノミークラスに対する一般旅行客の支払意思の上限を超え、一般旅行客をすべて逃す羽目になる。
あるタイプの顧客の購入意思をなくさないために選別者が従わなくてはならない制約「参加制約」
一般旅行客の「参加制約」とビジネス客の「誘因両立制約」の間の価格帯で料金を設定しなくてはならない。
ファーストクラスが215ドル
エコノミークラスが140ドル
という価格設定が一番儲かる。
状況が違えば、この戦略がXYZ社にとって最良の戦略とは限らない。
ビジネス客と一般旅行客の割合が半々だと、一般旅行客を相手にしないことにし、エコノミークラスの料金を引き上げ、ファーストクラスの料金をビジネス客の支払い意思の上限ぎりぎりに設定した方が得策。
A:(140-100)×50+(215-150)×50=5250
B:(300-150)×50=7500
B>A
廉価版の商品しか買う気のない消費者の割合が小さい場合は、高級版の価格を下げて高級版の顧客が廉価版に流出するのを防ぐ戦略が売り手にとって有利とは限らない。
廉価版の顧客を切り捨てた方が儲けが大きくなる可能性もある。
全ての基本をなすのは、①参加制約と②誘因両立制約の相関関係。
14.魔女の契り
社会のアウトサイダー的存在のグループにとって悩みの種は、やってくるメンバーが野次馬根性で見物に来ただけの人間なのか、本気でそのグループの活動に参加しようとしている人間なのかを見分けること。
魔女の集会⇒参加者が裸になる。(信頼ある選別装置として機能している。)
ギャング⇒新しいメンバーに、警察の潜入捜査員にとっては大きな負担になることを強要。ex.刺青を入れさせたり、犯罪行為をさせる。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
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