実行の確約(相手に本気と思わせる)② ゲーム理論(15)
3.相手の信頼性を弱める
相手の戦略活用行動によって双方にとって好ましい結果が得られるのであれば、相手の行動の信頼性が高まれば自分にとっても利点がある。
ex.囚人のジレンマゲーム
もし一方が戦略に信頼性をもたせる仕組みを考案すれば、その仕組みを一緒に用いようと相手にもちかけるのが正しい。
but
相手の戦略活用行動が自分に害を及ぼしかねないケースが少なからずある。
⇒相手の戦略活用行動に信頼性をもたせることを阻止。
以下は、相手が戦略活用行動に信頼性もたせることを阻止するための方法論:
●①契約の効力を骨抜きにする
少なくとも1回限りであれば契約の効力をなくせる。
意図的な裏切りではなくうっかり間違えてしまったのだと弁明し、契約を杓子定規に適用して今後の協力関係の恩恵を捨ててしまうのはもったいないと主張する。
●②評判の確立に対抗する
評判を確立することが信頼性獲得の手段になるのは、その評判が広く知られるから。
⇒皆に内緒にしておけば、相手にとって評判を気にすることは意味がなくなる。
●③情報を受け取らない
情報の遮断は、プレーヤーが自分の行動を撤回不能にすることによって有利な立場に立つことを目指す戦略活用行動。
⇒
そのプレーヤーの確約や脅しがこちらに伝わらないようにしてしまえば、その戦略活用行動は意味を持たない。
●④退路を除去させない
その真意は、相手を本当に逃げさせることではなく、まだ退路があると相手に思わせることにある。
(決死の戦いをするという信頼性のある意思表示を相手にさせないことこそ、孫氏の狙い。)
●⑤一方的に行動を細分化する
相手の意向に反して自分の行動を細分化すれば、相手の脅しの信頼性を弱められる可能性がある。
1つ1つのステップを徹底して細分化し、いちいち脅しを実行するのが割に合わないようにする。「サラミ作戦」
「水に入ってはいけない」
裸足になって足を水に浸ける⇒水の中で立ち上がる⇒歩き始める
国連で、超大国に逆らう場合、貿易協定の合意に一部だけ違反する。
ちょっとずつ核関連技術の取得を進めるなど、1つひとつの「反逆行為」を小規模にとどめることにより、本格的な報復措置を取らせないようにしている。
●⑥交渉代理人との交渉を拒む
代理人との交渉を拒絶し、本人との直接交渉を要求。
店員:自分には値引きをする権限がない
こちら:店長と話をさせてくれ
4.「ケーススタディ」大学教科書市場の攻防
米国の大学教科書市場の規模は、およそ70億ドル。
(映画産業の市場規模は100億ドル、全てのプロスポーツの売上高の合計が160億ドル)
教科書は1冊150ドル。学生は毎年8冊以上の教科書を買わなければならない。
学生は、使用済みの教科書を下取りしてもらって少しでもお金を取り戻そうとする。
(下取り価格の相場は定価の半分。書店はそれを定価の75%の金額で販売。)
大学の書店が使用済みの教科書を下取りするよう法律で義務づけてはどうか?
教科書が中古市場で2度売買されているとすると、出版社の売上部数は、中古本の売買が行われない場合に比べて3分の1。⇒新本で学生3人分の利益を確保する必要。⇒教科書の価格が150ドル。
出版社は中古本に市場を侵食されないよう、頻繁に教科書の改訂版を刊行。
改訂版がでるころには、教科書を買わないですませる学生が増える。
×書店に中古教科書の下取りを義務付ける⇒書店中古本が売れ残ることを計算に入れて、下取り価格を引き下げる。
○出版社が改訂版を出版しない出版しないと約束し、学生が中古本を売らないと約束。
1冊60ドルでOK。
出版社:損しない。改訂版刊行の手間が省ける。
学生:新本を購入する方が得。
書店:損をする。(新書販売の手数料と中古本販売の利益)
問題は、どうやって学生に使用済みの教科書を売却しないと約束させるか。
①禁止・・・現実的でない
②出版社が学生に貸し出す(出版社に保証金を納めて教科書を借り、使用後に返却すれば保証金を返還してもらう。)
出版社が教科書使用のライセンスを販売。
中古品を売買しないという信頼性のある確約ができるかどうかが問題となる場合は、総じて、商品を売るのではなくリースすることが問題解決の方法となりうる。
(中古品が存在しない)
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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