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2013年9月10日 (火)

実行の確約(相手に本気と思わせる)① ゲーム理論(14)

1.我々は神を信じる?
脅しにどうやって信頼性をもたせるか?
神の脅し(実を食べると死んでしまう)すら信じられないとすれば、誰の脅しを信じられるのか?
確約にせよ、脅しや約束にせよ、相手に本気にしてもらえなければ、あなたはゲームの結果を自分の有利なように改善できない

2.信頼性への8つの道 
相手の考えや行動に影響を及ぼしたければ、言葉の裏づけとなるしかるべく戦略的行動が欠かせない。

8つの方法の土台をなす原則
(1)ゲームから得られる利得を変更する
確約した内容を実行することが、自分の利益になるような状況をつくりだす。
脅しを警告に代え、約束を確言にかえる。

①契約を締結する。
②評判を確立しそれを利用する。

確約したことを破ると実行するより高くつく。

(2)確約したことから後戻りできる余地を減らすようにゲームの性格を変更する
③ゲームの関係者との情報交換を遮断する
④退路を完全に除去する
⑤成り行きを天にまかせる

⑥小さなステップに段階を分けて行動する

実効の確約を多数の小さな部分に分割できれば、裏切りによって得られる1回の利益より、裏切りによって失われる残りの部分からの利益のほうが大きくなる場合がある。

(3)実効の確約を守るために、他者を介在させる
団体で行動⇒1人のときより信頼性を確保しやすい。
自分の代理に他人を雇うこともできる。
⑦チームワークを通して信頼性を生み出す。
⑧代理人に交渉させる。

●①契約の締結
不履行に対する罰則を取り決める。
支払いの時期を仕事の進捗状況に連動させる取極め。
遅れに対する違約金条項

予定通りの仕事を進めることが自分の利益に適う。
契約を結ぶことで、工務店の確約に信頼性をもたせる。
自分がレストランで食事をしているところを目撃した人に2.5万ドルの賞金を払う。
but
問題は、改定を防止するメカニズムが欠けている。

一般に、契約で定めた行動の実行を強制したり、罰金を徴収したりする相手方も、契約で定めた行動の実行を望んでいる必要がある。

契約の執行に責任をもつ当事者が契約改定に応じた場合、職を失う仕組みがとられているケース。
中立の第三者を通じて契約を執行するケース。
「確約ストア」
・ストアに利害関係がない。
・ストアは評判を守りたいという意識が働く。

裁判所
・裁判官や裁判員は、原告と被告のどちらが勝っても直接の損得はない。
(損得をなくさせる必要)

マフィア
・長い目で見た場合の評判を守りたいという動機
・信頼性を確保するために、評判を確立し、裁判所より迅速・正確に証拠を判断するための専門知識を備える。

仲裁機関
・契約を破り、しかも仲裁機関の審判にも従わないメンバーに強力な制裁を課せる。
ex.組合の掲示板に違反業者の氏名と写真を掲示⇒村八分

契約を結ぶだけでは信頼性の問題は解決しない。
契約を機能させるために役立つのは、契約が執行されることが利益になる第三者や、契約を執行させないと評判に傷がつく第三者の力を借りるなど、契約に信頼性を与えるための仕組みを盛り込むこと。

●②評判の確立
ゲームは同時に複数の相手と、同じ相手と機会を変えて、何回も行う。
⇒評判を確立することに意味がある。

マフィアにとって、本当に効果のある要素は1つ。人を殺すなど、「タフな」行動をとったという経歴。
決意を表明し、その決意を守ることにメンツをかけることによって、自分の言葉に説得力を持たせる。
but
そのような行動をとらなかったら、その人物の評判は地に堕ちる。

●③情報の遮断
行動を撤回する道を閉ざす⇒実行を確実にする手立てになりうる。

究極の形態が遺言
~その人物が死亡してしまえば、もはや契約の内容の見直しは事実上不可能になる。

「博士の異常な愛情」
受話器を置くという行為により、リッパーは自分の行動を撤回不能にするための最後の一手を打った。

戦略的思考をするよういつも最善を尽くすべきではあるが、想定外の事態が起きても驚かないようにしなくてはならない。
情報が届かない状態に身を置くと、相手をこちらの望み通りに行動させることが難しい⇒第三者を雇ってその役割を担わせる
ex.遺言を守らせるため、遺言執行者を指名しておく。

●④退路の除去
軍隊はしばしば退却の可能性を自ら否定することで、実行に確実性を付与する。
コルテス:船を燃やす。
孫子⇒相手の戦意を喪失させるために、包囲戦であえて退路を残す戦略。

道をつくり出すことが退路を断つ結果になる場合もある。
ex.
東ドイツの指導者エゴン・クレンツはベルリンの一部を破壊することで、改革を実行しなければ国民が大量に流出するという状況に立たされた⇒改革の約束は信頼度を増し、東西ドイツの統一が実現。

●⑤成り行きまかせ
抑止の目的は、攻撃することへの恐怖を相手の頭の中につくりだすことにある。
人間の判断が介在する余地を排除し、撤回不能なプロセスを自動的にスタートさせるという点で、強い恐怖を生み出す。

壊滅的な結果を招く危険性を減らすために、相手の行動を抑止するのに必要最低限の程度に脅しをとどめたい。
but
核による反撃のように、軽度・重度の程度わけが難しい行動の場合
⇒瀬戸際作戦

瀬戸際作戦
恐ろしい結果を確実に引き起こすのではなく、そういう結果が起きる「危険性」をつくりだす
「完全にはコントロールできない危険」をつくりだす。
ex.皆殺し装置の爆発が起きる「危険性」を生み出す。

●⑥ステップに分けた行動
取引の規模が大きいと、当事者はなかなか相手を信頼しないかもしれない。
⇒規模を小さくして何回も確約を行う。

ex.
×100万ドルと1キロのコカインを交換
○1000ドルの取引を1000回行う。

○毎日あるいは毎週、仕事の進み具合に応じて支払が行われる。
~両者とも最悪でも1日ないし1週間分の損だけですむ。

発注者:前払いした後で不完全や手抜きの工事をされるのを恐れる。
業者:仕事を完成した後で発注者が払ってくれないのを恐れる。

●⑦チームワーク
自分1人では意志が弱くても、グループを組むことで決意を強められる
ex.
禁酒連盟
禁酒の誓いが破られると誇りや自尊心が傷つく仕組みをつくることにうより、確約に背いた場合に失うものを大きくしている。

古代ローマ軍:
攻撃に落伍した者を極刑に
隣の者が落伍するのを目撃した者はただちにその落伍者を殺す
落伍者を殺さなかった者も極刑に

ウエスト・ポイントでは、試験官はおらず、カンニングは放校となる罪。
カンニングを目撃して届け出ないことを名誉規律違反として、放校処分を課する。

刑法でも、犯罪の届出を怠った者を事後従犯に処する規定。

●⑧交渉代理人への委任
労働者側が主張(5%以下の賃上げではのめない)に信頼性をもたせるには、代わりに交渉してくれる代理人を立てる。
交渉相手との関係を壊したくないときは代理人を用いるといい。
(有効的な関係を傷つけまいといして、必要以上に譲歩してしまう。)
ex.
プロスポーツ選手がチームの経営陣と交渉
本の著者が出版社と交渉
機械も交渉代理人の一種になりうる(自動販売機相手に値切る人は少ない)。

店の店員や政府の役員がルールに機械的に従うよう求められる。
「権限がない」と言えることに利点がある。

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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