5つの組織構造 ドラッカー(36)
●仕事を組織する方法
すべての仕事は3通りの方法で組織できる
① 仕事を段階的に組織(ex.基礎⇒骨組みと屋根⇒内部の仕上げ)
② 仕事を技能別に組織(仕事は技能や道具の間を移動する。人は動かず仕事が動く。)
③ 仕事自体は動かさず、異なる技能や道具を持つ人たちが1つのチームとして動く。
●Ⅰ 職能別組織
長所:明快さ(組織のなかの者すべてに拠るべき家がある。)・安定性
限界:
・ 組織全体の目的を理解し、各人の仕事をそれに結びつけることが難しい。
・ 硬直的であり適応性に欠ける。
・ 組織の明日を担う者を育て、訓練し、テストするにも適していない。
・ 新しいアイデアや新しい方法を受け入れる気風に欠ける。
・ 現在行っていることを少しだけよくすることに力を注ぐ。
① うまくいっているときには高度の経済性
組織化、コミュニケーション、調整、斡旋に時間を割くトップは少なくてよい。
② うまくいかないときは非常な不経済。
・ 規模と複雑さの拡大⇒組織の細分化⇒調整役、委員会、会議、問題解決の専門家、など必要とするが、だいたい問題解決に役立たない。
・ 自らの職能の強化を図る⇒他の職能を犠牲にする。
・ 本当の意思決定ができるのは組織全体のトップのみ。その決定もあらゆるところで間違って解釈される→意思決定は満足に実施されない。
・ マネジメントに適さない人間を作る。(←成果よりも技能に重点を置く。)
●職能別組織の適用範囲
現業の仕事に限られる。
イノベーションのための仕事を職能別に組織することは不可能。
←イノベーションも専門能力を必要とするが、それをいつ、どこで必要とし、いかなる程度、量を必要とするかは誰も知らない。
●Ⅱ チーム型組織
異なる技能、知識、背景をもつ人、しかも本来異なる分野に属しながら、特定の仕事を果たすためにともに働く人の集まり。
チームを指揮する者は、仕事の段階や要求によって変わっていく。上司も部下もない。
●チーム型組織の長所と限界
長所
・ 全員、チーム全体の仕事が何であり、自分の責任が何であるかを知っている。
・ 新しい方法やアイデアも受け入れられ、事態の変化にも容易に適応できる。
限界
・ 明快さや安定性に欠ける。
・ 経済性も悪い。
・ 人間関係、仕事の割当て、会議、コミュニケーションなど内部管理に気を配る必要。
・ 規模の限界(メンバーが多いと有効に働かない。)
→
トップマネジメントの仕事に関しては唯一の組織構造。
イノベーションのための仕事にも最適。
but
現業の活動については、職能別組織を有効に動かすうえで必要となる補完的な組織構造。
知識組織においては、職能別組織(組織の中の人間の拠点)とチーム(仕事の場)の双方を使い分ける必要。
知識が進む→専門分化→専門分化した知識は、それだけでは何ら用をなさない断片にすぎない。
他の人の知識と結合するとき、初めて生産的になる。→高度の知識が成果に結びつくのはチーム型組織において。
●Ⅲ 連邦分権組織
いくつかの自立した事業部門に分割⇒各事業部門の業績と組織全体への貢献に責任を持つ。
各事業部門の内部は、職能別組織によって組織。
職能別組織やチーム型組織:仕事からスタート
連邦分権組織:成果からスタート→市場において成果をあげるうえで最適な事業部門をつくる→その内部にいかなる仕事、課題、活動が必要か考える。
●連邦分権組織の利点
今日、連邦分権組織が最高の組織構造。
・ 明快かつ経済的。
・ 自らや自らの属する事業部門の課題を容易に理解できる。
・ 高度な安定と適応力。
・ マネジャーの目と力を直接、事業の業績と成果に向けさせる。
・ 間接費によって現実の姿を曖昧にし、売上高によって現実の姿を隠すこともなくなる。
・ 明日を担うマネジャーを育成し、テストできる。
●トップの役割
事業部門は、本社のトップマネジメントから独立した自治的な存在。
事業部門のマネジメントの責任
・ 本社のトップマネジメントが本来の仕事をできるようにすること。
・ 市場、製品、潜在力、機会、問題について、トップマネジメントに何を知らせるかを考える。
・ 大幅な自治を与えられているがゆえに、自らが全体の一員であることを自覚する必要。
●Ⅳ 擬似分権組織
事業でないものを事業であるかのように組織。
分権化した組織単位に可能なかぎり自治権を与え、独自のマネジメントを持たせ、少なくとも擬似的な損益について責任を持たせる。
←事業ごとに分割することが不可能な組織。(ex.化学産業、材料産業)
●擬似分権組織の問題点
多くの点で不満足な組織構造。
・ 成果に焦点を合わせることが困難
・ 1人ひとりが自らの仕事の意味を理解することも困難。
・ 組織全体の仕事を理解することも困難。
・ 成果は、組織内部の意思決定(ex.帳簿価格や費用配分の仕方)によって左右される。
●擬似分権組織適用の原則
擬似分権組織は最後の手段。
小さい組織⇒職能別組織とチーム型組織の組合せ。
大きい組織⇒連邦分権組織
but各部門間の連携が必要でありながら分離して責任を持たせなければならない時、擬似分権組織が有効。
●Ⅴ システム型組織の登場
60年代のアメリカの宇宙開発のための組織構造として発展。
ex.チェース・マンハッタン銀行:中規模のしっかりした現地の銀行に若干の出資を行うことにより世界中に事業展開。所有も支配もせずに、それらの銀行を自らのシステムに組み込んでいる。
●システム型組織の問題点
厳しい条件が必要。
① 組織の目的の明確性。「自分たちの事業は何か、何であるべきか」を十二分に検討したときに限り、システム型組織は有効に機能する。
② コミュニケーションについて、組織の構成単位の全てが責任を持つ。
システム全体の基本的な目的、目標、戦略が全員に理解されるよう最大の注意を払う。
あらゆる種類の疑問とアイデアが受けつけられ、注意して聞かれ、重視され、検討され、理解され、結論を出されなければならない。
③ 組織の構成単位の全てが、自らの目標以外のことにも責任を持たなければならない。
全構成単位がマネジメントの責任を果たす。
責任を伴う高度の裁量権、イノベーションを行う機会、計画を変更する権限をもつ。
システム全体で何が行われているかを知るために不断の努力をする。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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