マネジメントの技能:管理 ドラッカー(31)
●管理手段の特性
組織における管理手段の3つの特性:
① 管理手段は純客観的でも純中立的でもありえない。
知覚の世界においては、測定という行為は客観的でも中立的でもありえない。
主観的な行為であり、何がしかの偏りをもたざるを得ない。
測定者を変える。
←測定することによって、知覚の経験が大きく変わる。
測定される対象も、測定のために取りだされ注目されるという事実のために、新たな意味と価値が加えられる。
⇒管理に関わる根本問題は、いかに管理するかではなく何を測定するかにある。
② 管理手段は成果に焦点を合わせなければならない。
活動の成果は組織の外に現れる。社会、経済、個々の人間に対する成果として表れる。
内部にあるのはコストセンターにすぎない。
管理的な活動の対象となっているのはコストにすぎない。
組織の成果は起業家的な活動の対象。
効率すなわち努力を記録し、これを定量的に把握することは容易であるが、成果すなわち外の世界に表れるものを記録し、定量的に把握する手段はほとんどない。
but
いかに効率的でも、売れないものだけをつくっている企業はつぶれる運命にある。
③ 管理手段は、測定可能な事象のみならず、測定不能な事象に対しても適用する必要。
測定できるものは、すでに発生した事実、過去のもの。
未来についての事実はない。
しかも、測定できるのは、ほとんどが外部ではなく内部の事象。
外部に発生する重要な事象(ex.馬車のムチをつくる産業が衰退していく原因、IBMが大企業に成長した理由、キューバにあるアメリカ系企業が没収されるにいたった経緯)は、少なくともそれらのことについて何かできた時期においては、変化を測定することは不可能だった。
測定と定量化に成功するほど、定量化したものに注目する⇒よく管理されていると見えるほど、それだけ管理していない危険がある。
●管理手段の要件
あらゆる管理手段が7つの要件を満たさなければならない。
① 管理手段は効率的でなければならない。
必要とする労力が少ないほど優れた管理。
管理手段が少ないほど管理は効果的。
管理システムの設計と利用にあたってまず検討すべきは、管理のために最小限必要な情報は何か。
② 管理手段は意味あるものでなければならない。
管理の対象として測定するものは、重要なものに限らなければならない。
成果に影響を与える事象だけを対象とすることによって、初めて本当の管理が可能となる。
意味のない事象の管理=本当の管理を放棄すること。
③ 管理手段は測定の対象に適していなければならない。
ex.従業員からの苦情数を管理butその部門の特定が行われていない。
その部門が工場の全製品が必ず通らなければならない最終組立部門であって、それらの苦情を無視すればストライキが起きかねない⇒企業そのものがつぶれることさえあり得る。
④ 管理手段の精度は測定の対象に適していなければならない。
誤差20%でしか言えないことについて、少数6位まで測定しても正確にならない。
正確な測定が困難であり、幅をもってしか評価できないという情報こそ重要。
一見根拠のがあるかのごとき細かな数字こそ不正確。
⑤ 管理手段は、時間間隔が測定の対象に適していなければならない。
頻繁な報告がよりよい管理を意味するわけではない。かえって管理を無効にする。
多くの場合、研究開発活動に間断なく評価を加えることも成果に悪い影響を与える。
⑥ 管理手段は単純でなければならない。
管理手段は、複雑であっては機能しない。
肝心の管理の対象ではなく、管理の方法の方に関心が移る。
⑦ 管理手段は行動に焦点を合わせなくてはならない。
管理の目的は情報収集ではなく行動(=検討や分析であることもある)
⇒報告、調査結果、数字など管理手段となるものは全て、行動を起こすことのできる者に到達しなくてはならない。
●真の管理とは何か
管理手段には基本的かつ根源的な制約がある。
←組織というものが①それ自体実体であると同時に、②人間社会の擬制にすぎない。
①実体としての組織:
それ自体の目的を持ち、活動を行い、それ自体の成果をあげる。
②人の集合としての組織:
人にはそれぞれの理想、目的、欲求、ニーズがある⇒メンバーの欲求やニーズを満たさなければならない。
それが、賞や罰、各種の奨励策、抑止策。
給与のように定量的なものもあるが、個人の欲求に応えるための環境そのものは定量的ではない。
賞罰こそ、組織の目的、価値観、そして自らの位置付けと役割を教えるもの。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
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