先を読んで今を推量せよ・・・交互行動ゲーム ゲーム理論(3)
要点 先を読んで今を推測せよ
1.君の番だよ、チャーリー・ブラウン
2.2種類の戦略的相互作用
①交互行動ゲーム:ex.チャーリー・ブラウンの話
~プレーヤーが交互に判断し、行動するもの。
今自分がどういう行動をとれば相手がどんな手で応じてくるか、さらにそれに対し自分はどう対応するかというように先を読まなければならない。
②同時進行ゲーム:ex.囚人のジレンマ
~プレーヤーは相手の次の行動を知らないまま、それぞれに意思決定する。
各プレーヤーは他にプレーヤーがいること、そして、他のプレーヤーがこちらの存在を知っていることもわかっている。
⇒各プレーヤーは他人の立場に身を置いて考え、結果を推量しなくてはならない。
フットボールのように①②の両面をもったゲームもある。
3.戦略のルール①
一般的法則:
プレーヤーは相手の将来の対応を見極め、それに続く自分の最善の行動を推量する。
ルール①:先を読んで、合理的に今を推量せよ。
~自分の最初の意思決定が究極的にどういう結果を招くのかを予想し、それに基づいて自分の最善の選択を推定する。
4.意思決定樹形図とゲーム樹形図
①意思決定樹形図:1人だけで行う意思決定を表す樹形図
~将来の意思決定を予想して、それをもとに今の選択を行うのが正しい。
ex.ダウンタウンへ行くとすればパス・トレインを使えばニューアークから直接行けるので、パス・トレインの方が車よりいい。
②ゲーム樹形図:戦略的ゲームの複数のプレーヤーの連続した意思決定を表す樹形図
5.フットボールのケースとビジネスのケース
チャーリーはルーシーが上の枝を選ぶと予想できる⇒自分の選択のうち下の枝を選ぶほうがよい。
フレドと名乗るビジネスマンが、「元手さえあれば大儲けできる。10万ドル投資してくれれば、1年で50万ドルの増やすので、それを2人で山分けしましょう。」
この種のゲームで正しい推量を行わないチャーリーやその同類が世界にあまりに多い。
指摘しておきたいこと
①異なるゲームでも、樹形図や表の形であらわすと同じであったりよく似ている。
⇒図や表を使えば、異なるゲームの類似性が浮き彫りになり、あるゲームに関する知識を別のゲームに応用できる。
さまざまな異なる状況の根底にある類似性に着目し、1つの単純化したアプローチで検討できるようにすることは、「理論」のもつ重要な機能。
②フレドとしては、チャーリーが戦略的思考をすればビタ一文出資しないだろうと予測すべき⇒信頼を獲得する手段が必要。
③プレーヤーがどういう選択をすれば、結果にどういう違いが生まれるかを比較検討すべし(最重要)。
ゲームはゼロサムゲームである必要はない。
双方が勝者のウィン・ウィンの結果になる場合もあれば、双方が敗者のルーズ・ルーズになる場合もある。
たいてい、双方の利害が一致するシナリオ(チャーリーとフレドが得をする)と、利害が衝突するシナリオ(フレドの持ち逃げにより、チャーリーが損をしてフレドが得をする)が併存
6.複雑な樹形図
「議会が利益誘導型の予算を通そうとし、大統領が議会の可決した肥大化した予算を削ろうとする」⇒大統領が個別拒否権を希望。
but
大統領が個別拒否権を手にすれば、それに応じて議会側の戦略も変わってくる。
ex.
拒否権なし⇒都市(議会)+ミサイル(大統領)の抱き合わせの予算を採択⇒認められる。
拒否権あり⇒双方とも通らない(ミサイルの予算は採択しない)
1人だけで行う意思決定では、行動の自由が広がってもデメリットは全くないが、ゲームの場合は、それがマイナスになるケースもある。
(逆に、自分の手足を縛ることが好ましい結果を生む場合もある。)
←プレーヤーが行動の自由を手にしたという事実がほかのプレーヤーの行動に影響を及ぼする可能性がある。
7.「サバイバー」で生き残る戦略
地面に21本の旗を立てておいて、両チームが順番に旗を引き抜いていく。1回に取り除ける旗の数は1~3本。勝つのは、最後の1本を引き抜いたチーム。
相手に4本で渡せば勝ち。⇒その前に8本残して相手に引き渡す。⇒その前に12本⇒16本⇒20本。
最初に1本だけ取り除くのが正解。
シンプルなゲームですら正しいプレーの仕方を身につけるまでに時間と経験が必要。
当事者より観察者のほうがゲームの全体像を把握し、冷静に推量を働かせられる。
8.逆戻り推量で完全に解けるゲームの条件とは?
逆戻り推量:ゴールから遡って考えていく。
①選択を行うときに、プレーヤーが状況を正確に把握できていること。
②プレーヤーがお互いの動機をわかっていること。
but
実社会では、利己主義、利他主義、正義と公平を重んじる気持ち、短期的な計算と長期的な計算が複雑に入り混じっている。
その人が置かれている状況を先入観抜きで考える必要がある。
③戦略的不確実性がないこと。
戦略的不確実性:プレーヤーがほかのプレーヤーの選択を把握できない状況
9.逆戻り推量を実際の例に当てはめると
「受けるか拒むか」型のゲーム。
総額の10%未満の金額を提案する人はほとんどいない。
中央値は、総額の40~50%の範囲に収まる。
多くの実験では、50%ずつわけようともちかけた提案者がいちばん多かった。
被提案者は、分け前が20%に満たないと、およそ半分の確率で提案を拒絶する。
10.「非合理的」な行動を取る理由
なぜ、提案者は相手に少なからざる金額を与えようとするのか。
×①提案者が逆戻り推量を行えないという可能性。
②利他主義や公平性を考えて振る舞っている可能性。
③提案が拒絶されるのではないかと恐れている可能性。
「独裁者ゲーム」(提案者がお金の分け方を一方的に通告し、相手はそれに従うしかない)~相手への通告はゼロよりはかなり多い。
⇒③戦略的計算という側面だけでなく、②寛大な態度という側面もある。
コイントス⇒平等性や公平性を意識しやすくなる。
試験で決める⇒特権意識⇒相手への提案が低くなるbutゼロよりかなり高い。
⇒利他主義精神が働いている。
①利他主義精神(万人に対する態度)
②恥の意識
被提案者は何故拒むのか。
~本能的もしくは感情的な反応。
提案が不平等⇒
被提案者の脳の前島(怒りや憤まんなどの感情に関係する脳の領域)が活性化
不平等な提案を受け入れるときに活性化するのは、脳の左の前頭前野(感情のコントロールに関係している部位)。
社会規範や慣習も適用される。
A:小規模な家族単位で暮し、社会的な結びつきが乏しく「共有」を尊ぶ社会規範が弱い
B:幸運に恵まれたときには他人に気前よくおすそわけをし、その恩恵にあずかった人は将来もっと気前よくお返しするという慣習
11.利他主義と公平性の進化
逆戻り推量を出発点にすべき(ただし初心者は間違いを犯す場合があり、複雑性の高いゲームではコンピューターや専門家の助けが必要。)
←政治やビジネス、プロスポーツなどの世界では、プレーヤーはそのゲームに習熟している。
実験結果から読み取るべきは、人々が行動を選択するときに考慮するのが経済的損得だけではないということ。
⇒従来の経済学理論の枠外に足を踏み出し、プレーヤーが公平性や利他主義精神を意識することを念頭におく必要がある。
行動ゲーム理論は、合理性を無視するのではなく、合理性という言葉の意味を押し広げている。
公平性と利他主義を尊重する規範が形成されている集団は、私利私欲だけで行動する人間の集団に比べて内部対立が少なく、全員に恩恵をもたらすものを調達したり、共有の資源を保全したりといったグループ全体としての行動をとりやすい
⇒そういう集団は経済的にも潤う。
公平性と利他主義の規範をもたない集団との差は歴然としている。
提案を拒否した6人は、テストステロン(男性ホルモン)の値が平均で50%高かった。
社会的地位や攻撃性と関連があるホルモン。
家庭や学校での子供の教育と社会への適応のプロセスも、社会が規範を次の世代に伝える手立てとして機能している。
「他人に気遣いをすること」「物を独り占めしないこと」「親切にふるまうこと」の大切さ
⇒生涯を通じて行動に影響を及ぼす。
長い目で見て社会を進歩させ成功に導くのは革新と変革。
その土台をなすのは個人主義の精神、そして社会規範と固定観念を無視する姿勢。
~利己主義と表裏一体の場合も少なくない。
⇒利己主義と利他主義を適度にあわせもつことが重要。
12.複雑すぎる樹形図
チェスは逆戻り推量で正解を導けるゲーム
①交互にプレー
②相手のプレーの内容を知ることができる
③盤上の局面や相手の目的について不確実性はない
①先読み分析と②価値判断を併用してプレーするというアプローチ。
~ゲーム理論という「科学」と経験者ならではの「技」(盤上の駒の数位置関係を見て、目の前の局面について価値判断を下す能力)を組み合わせて用いる。
教訓①:複雑性の高いゲームをするときは、先読み・逆戻り推量とあわせて、先読み可能な段階より先の状況を判断するために経験則を活用すべし。
13.1人2役で考える
教訓②:自分と相手の双方の視点をもつべし。
相手がこちらの見落としている点に気づくかもしれないし、逆にこちらが気付いた点を相手が見逃すかもしれない。
⇒予想していない行動をとる可能性がある。
相手の行動を予測しようとする場合、相手が知っていることを自分も知っておかなくてはならないのは当然として、相手が知らないことは知っていてはいけない。
企業がビジネス上のシナリオを事前にシミュレーションする際は、社外の人物を雇ってほかのプレーヤーの役をプレーさせる場合もある。最も有益な情報が得られるのは、えてして、相手方が予想外の行動をとったとき。
⇒その行動をもたらした原因を突き止める⇒相手の好ましくない行動を阻止し、好ましい行動を促せる。
14.トム・オズボーンと1984年オレンジボール
いずれリスクを負わなければならないのであれば、なるべく早く負う方がいいことが多い。(ファーストサーブとセカンドサーブ)
←最初の試みで失敗してもそこで終りではない。まだ、他の手段により失敗を挽回したり、あるいは失敗を成功に変えるチャンスがあるから。
早い段階でリスクをとるべしという教訓は、キャリア選択、投資、恋愛等、人生のほとんどの局面で当てはまる。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
「ゲーム理論」カテゴリの記事
- ケーススタディー④ ゲーム理論(35・完)(2013.09.26)
- ケーススタディー③ ゲーム理論(34)(2013.09.26)
- ケーススタディー② ゲーム理論(33)(2013.09.24)
- ケーススタディー① ゲーム理論(32)(2013.09.23)
- 仕事の動機付け戦略 誘因(インセンティブ)③ ゲーム理論(31)(2013.09.22)
コメント