マネジメントの技能:意思決定 ドラッカー(29)
●意思決定の力点をどこに置くか
日本型:
合意(コンセンサス)によって意思決定を行っている。
意思決定で重要なことは問題を明らかにすること。
(そもそも意思決定は必要か、そもそも何についての意思決定かを明らかにすることが重要とされる。)
日本では、契約の必要を検討する段階で、契約締結後に関わりを持つことになる人たちを巻き込んでおく。関係者全員が意思決定の必要を認めたとき、初めて決定が行われる。このとき、ようやく交渉が始まる。その後の日本側の行動は迅速。
欧米が決定と呼ぶ段階に達したときは、日本では行動の段階に達したという。日本では、この段階で意思決定の責任を「しかるべき人間」に任せてしまう。
日本流意思決定のエッセンス。
① 何についての意思決定かを決めることに重点をおく(答えではなく問題を明らかにすることに重点を置く。)。
② 反対意見を出やすくする(コンセンサスを得るまでの間、答えについての論議は行わない。あらゆる見方とアプローチを検討の対象にする。)。
③ 当然の解決策より複数の解決案を問題にする。
④ いかなる地位の誰が決定すべきかを問題にする。
⑤ 決定後の関係者への売込みを不要にする(意思決定のプロセスのなかに実施の方策を組み込む。)。
●問題を明確にする
答えの違いの多くは、何についての意思決定かについての認識の違いから生ずる。
⇒どのような認識の仕方があるかを明らかにすることが、効果的な意思決定の第一歩となる。
間違った問題に対する正しい答えほど、実りがないだけでなく害を与えるものはない。
意思決定は見解からスタートしなければならない。異なる見解を奨励しなければならない。同時に、見解を出す者に対し、その妥当性について徹底的に考えることを求めなければならない。
●意見の対立を促す
マネジメントの行う意思決定は、対立する見解が衝突し、異なる見解が対話し、いくつかの判断のなかから選択が行われて初めて行うことができる。
⇒意見の対立を見ないときには決定を行わない。
意見の対立を促す
←
① 不完全であったり、まちがったりしている意見によってだまされることを防げる。
② 代案を手にできる。
③ 想像力を引き出せる。
●意見の相違を重視する
なぜ他の者は意見が違うのかを明らかにすることからスタートする。
明らかにまちがった結論に達していいる者がいても、それは、何か自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考える。
●行動すべきか否か
常に「意思決定は必要か」を検討しなければならない。
何もしないことを決定するのも、1つの決定。
何もしないとどうなるか?
①事態が悪化⇒意思決定を行う必要
②大切な機会を失う⇒行動する必要
③うまくいく⇒手をつけてはならない。
④多少頭痛の種ではあるが、たいした問題でない⇒手をつけない。
行動すべきか否かを決める指針:
① 行動によって得られるものが、コストやリスクよりも大きい⇒行動する。
② 行動するかしないかいずれかにする。二股や妥協はだめ。
●意思決定の実行
効果的な意思決定とは、行動と成果に対するコミット。
(決定を行った後でその決定を売り込む必要があるのでは、行動は起こされないし、成果も得られない。)
意思決定の実行を効果的なものにするには:
①決定を実行するうえでなんらかの行動を起こすべき者、逆に言えば決定の実行を妨げることのできる者全員を、決定前の論議のなかに責任をもたせて参画させておく。
(民主主義ではなく、セールスマンシップ)
② 意思決定のなかに実行の手順や責任を組み込んでおく(具体的な実行の手順が仕事として割当てられ、責任として割当てられないことは、決定はないに等しい。)。
決定を実行に移すために必要な問い:
「この決定を知らなければならないのは誰か」
「とるべき行動は何か」
「それはなぜか」
「行動をとるべき者が行動できるためには、その行動はいかなるものでなければならないか」
●フィードバックの仕組み
意思決定の前提となった予測を現実に照らして検証するためのフィードバックの仕組み
決定後の状況が、想定したとおりに進展することは少ない
①最善の意思決定さえ思わず障害にぶつかり、あらゆる種類の意外な事態に出会う。
②もっともすぐれた意思決定も結局は陳腐化する。
⇒実行の成果からのフィードバックがないかぎり、期待する成果を手に入れ続けることはできない。
①意思決定の前提となった予測をはっきりさせる(書面をもって明らかにしておく。)。
②決定の結果について体系的にフィードバックする。
③ フィードバックの仕組みを、決定を実行する前につくりあげておく。
意思決定は機械的な仕事ではない。リスクを伴う仕事。判断力に対する挑戦。
大事なのは、問題への答えではなく、問題についての理解。
意思決定とは、効果的な行動をもたらすために、ビジョン、エネルギー、資源を総動員すること。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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