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2013年7月25日 (木)

適格退職年金制度の終了に伴い支払われた一時金とみなし退職所得(所得税法31条)(否定)

東京地裁H24.12.11   

適格退職年金制度の終了に伴い支払われた一時金について、みなし退職所得(所得税法31条)には該当せず、一時所得(同法34条)に該当するものと判断された事例 

<事案>
TBSは、運用環境の悪化により給付利率を確保することが極めて困難

平成17年3月31日をもって、適格退職年金制度を終了し、従前の年金給付の39.8%は閉鎖型適格退職年金(加入者がおらず受給権者のみで構成された年金)として支給を継続するが、残りの60.2%は、年金現価(将来の年金を一括払するものとして、運用利息を考慮して、割引計算した金額)に置き換えて算出した各一時金として支払うこととした。 

原告らが還付を受けた本件各一時金を平成19年分の退職所得として確定申告をしたところ、処分行政庁から、本件各一時金を平成17年分の一時所得とする更正処分及び過少申告加算税賦課決定を受けたため、上記処分等の取消しを求めた事案。

<争点>
①本件各一時金が一時所得(所得税法34条)に該当するか、それともみなし退職所得(同法31条)に該当するか
②本件各一時金が平成17年分の所得であるか、それとも平成19年分の所得であるか 

<判断>

争点①について 
ある金員が所得税法30条1項に規定する退職所得に該当するためには、それが、
①退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること
②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること
③一時金として支払われること
の要件を備えることが必要。

本件各一時金については、TBSが本件年金制度の終了に伴って年金基金を退職年金受給権者及び加入者に分配したことによって行われたものであって、本件各受給者がTBSを「退職」したという事実によって初めて支給されたものとは認められず、
既にTBSを退職して本件年金制度に基づく退職年金を受給しており、公的年金等に係る雑所得としての課税関係が開始されていた各受給権者に対し、将来の年金給付の総額の60.2パーセントに相当する金員が繰上支給されたものといえる。

「適格退職年金契約に基づいて支給を受ける一時金」で「退職により支払われるもの」(所得税法31条1項3号)には該当せず、一時所得(所得税法34条1項)に該当。

所得税基本通達31-1(1)は、
所得税法31条3号に規定する「加入者の退職により支払われるものその他これに類する一時金として政令で定めるもの」には、「適格退職年金契約に基づいて支給される年金の受給資格者に対し当該年金に代えて支払われる一時金のうち、退職の日以後当該年金の受給開始日までの間に支払われるもの(年金のうち受給開始後に支払われる一時金のうち、将来の年金給付の総額に代えて支払われるものを含む。)」と規定しているが、本件各一時金は、将来の年金給付の総額の60.2パーセントに代えて支払われるもの⇒上記通達は適用されない。


争点②について 
所得税法36条1項は、いわゆる権利確定主義を採用しており、現実の収入がなくても、収入となるべき権利が発生した後、これを法律上行使することができるようになり、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になったときは、権利が確定したといい得る。

TBSは、平成17年4月1日付で本件年金制度を終了させた

本件各一時金については、平成17年4月1日の時点で、これを法律上行使することができるようになり、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になった。

本件各一時金は平成17年の所得に帰属。

本件各一時金は平成17年分の一時所得に該当
⇒原告らに対する更正処分等は適法。

<解説>
所得税法は、退職所得について、収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とする(30条2項)とともに、退職所得控除額は勤続年数に応じて増加することとして(同条3項)、課税対象額が一般の給与所得に比較して少なくなるようにしており、税額の計算についても、他の所得と分離して累進税率を適用することとして(89条)、税負担の軽減を図っている。

その趣旨について、最高裁昭和58.9.9:
退職手当等の名義で退職を原因として一時に支給される金員は、その内容において、退職者が長期間特定の事業所等において勤務してきたことに対する報償及び右期間中の就労に対する対価の一部分の累積たる性質をもつとともに、その機能において、受給者の退職後の生活を保障し、多くの場合いわゆる老後の生活の糧となるものであって、他の一般の給与所得と同様に一律に累進税率による課税の対象とし、一時に高額の所得税を課することとしたのでは、公正を欠き、かつ社会政策的にも妥当でない結果を生ずることになることから、このような結果を避けるためのものと解される。

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