共同訴訟的補助参加
仙台高裁H25.1.24
行政事件訴訟法22条により訴訟参加することのできる第三者が民事訴訟法上の補助参加をした場合にいわゆる共同訴訟的補助参加と解することができるか
<事案>
産業廃棄物処理施設の予定地の近隣住民であるXらが、Y県に対し、県知事がした施設設置許可について、主位的には処分取消し、予備的には処分取消しの義務付けを求めた事案。
第1審の審理の過程において、上記施設の設置許可を受けた産業廃棄物処理業者であるZがY県に補助参加をした。
第一審判決が、Xらの予備的請求を認容したところ、補助参加人であるZが、これを不服として控訴をしたが、費補助参加人であるY県は、控訴をせず、かつ、Zがした控訴を取り下げた。
Zは、上記施設設置許可が取り消されると同施設において産業廃棄物の処理ができなくなるから、訴訟の結果により権利を害される第三者として、行政事件訴訟法22条による共同訴訟参加に準じた訴訟参加をすることができる者であるが、本件参加の申立てが民訴法42条以下の規定による補助参加である旨を裁判所及びXらに明らかにしている。
<規定>
行政事件訴訟法 第22条(第三者の訴訟参加)
裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その第三者を訴訟に参加させることができる。
民訴法 第42条(補助参加)
訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。
<問題点>
Y県が単独でした控訴取下げの効力をめぐって、Zのした補助参加をいわゆる共同訴訟的補助参加と解すると、Zの同意なくしてしたY県の控訴取下げが無効ではないかが問題。
<判断>
共同訴訟補助参加なる概念は、第三者が判決の効力を受けるにもかかわらず、当事者適格が認められないことから自ら共同訴訟参加することができない場合に、いわば立法の不備を補うために解釈論によって認められたもの。
⇒
共同訴訟参加又はこれに準じた訴訟参加の制度が法令上明文で定められている場合には、その手続・要件の違いを超えて共同訴訟参加の規定を準用ないし類推する基礎を欠く。
⇒
Zが、行政事件訴訟法22条による参加ができる第三者であるにもかかわらず、これによることなく、あえて民事訴訟法上の補助参加を選択した以上は、民訴法の定める補助参加人としての地位に基づく権限を有するにすぎず、被参加人であるY権の訴訟行為と抵触する訴訟行為を行うことができない結果、Y県がした控訴の取下げはZの同意の有無に関わりなく有効である。
⇒
主文において訴訟の修了を宣言。
<上告>
上告棄却・不受理。
<解説>
共同訴訟的補助参加とは、判例の効力が第三者たる補助参加人にも及ぶ場合がある場合に、そのような補助参加人に共同訴訟人に準じた訴訟追行権を与えてその利益を保護しようとするもので、法令上の規定はないが、ドイツ民訴法に倣って学説・判例上認められてきた概念。
最高裁昭和40.6.24:
本件と同様に取消訴訟の事案において被告の補助参加人がした控訴を被参加人である控訴人が取り下げた場合について、判決の効力が第三者たる補助参加人に及ぶ場合、その補助参加をいわゆる共同訴訟的補助参加と解するのが相当。
⇒
被参加人だけで控訴を取り下げても、それによって控訴の効力が失われるものではない。
~
but
これは、行政事件訴訟法22条のような共同訴訟参加に準じた参加の規定がない行政事件訴訟特例法下での事案。
最高裁昭和63.2.25:
住民訴訟の係属中に同じ理由で監査請求を経た他の住民が原告である住民らに補助参加した事案において、同補助参加の申出は、旧民訴訟75条所定の共同訴訟参加をすることが可能である場合に行われたものであることが明らかであるとした上で、そのような補助参加をいわゆる共同訴訟補助参加と解することはできない
⇒
補助参加人のした控訴は被参加人(一審原告)らの控訴の取下げによって効力を失う。
http://www.simpral.com/hanreijihou2013kouhan.html
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