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2013年7月 6日 (土)

「獣畜のとさつ又は解体の検査」の仮の義務付け

東京地裁H24.10.23    

と畜場法14条に規定する「獣畜のとさつ又は解体の検査」の仮の義務付けが認められた事例 

<事案>
申立人は、と畜場法14条に規定するとさつ等の検査がされなければと畜業を営むことができない

①上記検査を行わせることの義務付けを求める本案訴訟を提起した上、
②上記検査がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときに当たると主張して、行訴法37条の5第1項に基づき、上記検査を仮に行わせることを命ずることを求める本件仮の義務付け申立てをした。 

<規定>
行政事件訴訟法 第3条(抗告訴訟)

2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

行政事件訴訟法 第37条の3
第三条第六項第二号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。
二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。
2 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる。
3 第一項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第三十八条第一項において準用する第十二条の規定にかかわらず、その定めに従う。
一 第一項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴え
二 第一項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え
 
行政事件訴訟法 第37条の5(仮の義務付け及び仮の差止め)
義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
4 第二十五条第五項から第八項まで、第二十六条から第二十八条まで及び第三十三条第一項の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
5 前項において準用する第二十五条第七項の即時抗告についての裁判又は前項において準用する第二十六条第一項の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなければならない。

<判断>
仮の義務付けが認められるための手続要件に関し、
①適法な義務付けの訴えが提起されているか否か、すなわち本案訴訟が適法な義務付けの訴えといえるか否か

仮の義務付けが認められるための実体要件に関し
②処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある(行訴法37条の5第1項)といえるか否か
③「本案について理由があるとみえる」(同項)といえるか否か
④仮の義務付けが「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」(同条3項)に該当しないといえるか

争点①について:
と畜場14条に規定するとさつ等の検査は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行訴法3条2項)に該当し、と畜場法及びと畜場法施行令は、上記検査を受けようとする者に検査の申請権を付与している
⇒本案訴訟は、いわゆる申請型義務付けの訴え(行訴法3条6項2号)に該当。

申立人がした上記検査の申請に対して八王子市市長は相当の期間内に何らの処分もしておらず、申立人はその不作為の違法確認を求める訴訟を併合提起

本案訴訟は、申請型義務付けの訴えの訴訟要件(行訴法37条の3第1項1号、2項、3項1号) をいずれも満たす。

争点②について:
申立人は、上記検査がされないことにより、と畜をして収入を得ることができず、その存立自体が危機に瀕するだけでなく、申立人の組合員が廃業を余儀なくされる事態が生じかねない
・・・その損害は、社会通念上、事後的な金銭賠償等で回復させることは不可能あるいは著しく困難

「処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある」(行訴法37条の5第1項)

争点③について:
本件建物の貸付契約は、借地借家法の適用がある賃貸借契約に該当し、更新拒絶の正当事由が認められない
⇒上記貸付契約は法定更新されて存続しており、設置許可取消処分は処分事由を欠くものとして取り消されるべきであり(上記設置許可取消処分は聴聞手続を欠くとうい手続的違法によっても取り消されるべきものとした。)
本案訴訟が認容される蓋然性がある

争点④について:
八王子市長にと畜場14条に規定する検査を行うよう仮に義務付けることが、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」(行訴法37条の5第3項)とはいえない。

八王子市長に対し、本案訴訟の第一審判決の言渡しの時までの間、と畜検査員にと畜場法14条に規定する検査を仮に行わせるよう義務付けた。

<解説>
仮の義務付け制度の認容例:
・身体障害のある児童等について一般の保育園等への入園の承諾等
・公の施設の使用許可
・タクシー運賃認可
・生活保護開始決定

http://www.simpral.com/hanreijihou2013kouhan.html

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