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2013年6月22日 (土)

公害等調整委員会における不服裁定手続

公調委裁定H25.3.11   

砂利採取法に基づく砂利採取計画の認可に関して北海道が定めた条例等が、同法との関係で別段の規制に当たるものの同法との矛盾抵触はないとして当該条例等を適法とした上で、申請人に対する砂利採取計画不認可処分も適法であるとして取消裁定申請が棄却された事例
北海道石狩市花川東地先内の砂利採取計画不認可処分に対する取消裁定申請事件 

<事案>
砂利採取業者である申請人が砂利採取法16条に基づいて北海道知事に対して行った砂利採取計画認可申請に対し、処分庁は、申請に係る採取計画には砂利採取跡地を埋め戻す旨の記載があるが、埋戻しの履行を担保するために金融機関又は業界団体の保証を求める条例及び施行規則の措置を講じていないことをもって、砂利採取法19条に規定する「採取計画に基づいて行う砂利の採取が他人に危害を及ぼし・・・・公共の福祉に反するとき」に当たるとして、不認可処分

申請人が、この処分の違法性を主張して、公害等調整員会に対して、当該処分の取消しの裁定を申請した事案。

<判断・解説>

公害等調整委員会における不服裁定手続 

公害等調停委員会は、
①調停や裁定などによって公害紛争の迅速・適正な解決を図ること(公害紛争処理)、
②鉱業、採石業又は砂利採取業と一般公益等との調整を図ること(土地利用調整)を主な任務とする独立行政委員会。

本件のような砂利採取計画認可申請に対する処分に不服がある者は、砂利採取法40条に基づいて公害等調整委員会に対して裁定の申請をすることができる。

この裁定手続は、「鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律」に従って行われる。

裁定申請は、原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならず(同法25条1項)、裁定は、3人の裁定委員からなる裁定委員会によって行われ(同法2条1項)、裁定委員会は、当事者から申し出のある証拠調べを実施するほか、職権で必要な調査を実施することができる(同法33条1項)。
裁定は、処分庁及び裁定に関係のある行政庁を拘束する(同法44条1項)。

申請に基づいてした処分が手続の違法・不当を理由として取り消され、又は申請を却下・棄却した処分が取り消された場合には、処分庁は、裁定の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をする(同条2項)。

申請人が裁定に不服⇒裁判所に対してその取消しの訴えを提起(同法49条1項)。

この訴訟においては、裁定委員会の認定した事実はこれを立証する実質的な証拠があるときは裁判所を拘束する、いわゆる実質的証拠法則が採用(同法52条)。


本件の問題点

本件条例及び規則は、砂利採取法の要件に付加された新たな不認可要件を設けたもの⇒砂利採取法がこのような要件の上乗せを許容する趣旨の法令であるか否かが問題。


裁定 

「普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。そして、両者が同一の目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾抵触はな」い(徳島市公安条例事件判決 最高裁昭和50.9.10)

砂利採取法の規定の趣旨・目的と本件条例及び規則のそれが同一であることを認定。

砂利採取法が地方の実情に応じて別段の規制を施すことを容認する趣旨であると判示。

本件条例及び規則を適法とした上で、申請人に対する不認可処分にも違法性はない。 


解説

平成12年4月の「地方分権の推進を図るあめの関係法律の整備等に関する法律」(いわゆる地方分権一括法)の施行に伴い、従来国の機関委任事務とされていた事務の多くが地方公共団体の自治事務又は法定受託事務とされた

それまでは各自治体が要綱等による行政指導で対応していた点について、条例・規則を制定する動きが見られる。
本件条例及び規則は、こうした自治事務の範囲拡大に伴って制定されたものであり、地方分権改革の流れを示すもの。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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