国税通則法65条5項の「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」
東京地裁H24.9.25
法人税の修正申告書の提出が「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」(国税通則法65条5項)に該当すると認められた事例
<事案>
原告は、機械及び装置の増加償却(法定耐用年数を基準とした償却限度額を上回る減価償却を行うこと)の特例の適用要件である増加償却の届出の提出(法人税法施行令60条)を行っていないにもかかわらず、増加償却の特例を適用して法事税額を算出した上で法人税の確定申告書を提出。
その後、原告は、国税局の担当者による臨時調査の実施中に、法人税法上増加償却を行うことができないので減価償却費の償却限度超過額が生じていたとして修正申告書を提出。
⇒
法人税の過少申告加算税賦課決定処分
⇒
上記修正申告の提出は「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してなされたものでないとき」(国税通則法65条5項)に該当するので、過少申告加算税を賦課することはできないと主張し、過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求めた事案。
<判断>
国税通則法65条5項の「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」とは、
税務職員が申告に係る国税についての調査に着手し、その申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至であろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階(いわゆる「客観的確実時期」)に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないことをいうものと解するのが相当。
本件については、原告は、届出書を提出していなかったことのみをもって、増加償却の特例の要件を満たさないことになり、ひいては申告が不適正なものとなった。
⇒客観的確実時期に達していたというためには、届出書の不提出が発見されるであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたことが必要。
調査担当者は、確定申告書等を収集したり、減価償却計算の適否に係る調査を行ったりしていたものの、確定申告書等は届出書の不提出を発見するにたる資料とはいえないし、届出書の不提出が発見される一般的抽象的可能性を有する程度の調査がされていたにすぎない。
⇒原告が修正申告書を提出した時点では、客観的確実時期に達していなかった。
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