成年後見人の横領と刑法244条1項
最高裁H24.10.9
1.家庭裁判所から選任された成年後見人が成年後見人所有の財物を横領した場合と刑法244条1項の準用の有無
2.家庭裁判所から選任された成年後見人が成年被後見人所有の財物を横領した場合に成年後見人と成年被後見人との間の親族関係を量刑上酌むべき事情として考慮することの当否
<規定>
刑法 第244条(親族間の犯罪に関する特例)
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
<判断>
弁護人の上告趣意は、刑訴法405条の上告理由に当たらないとした上で、なお書きで、
「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務jを負っているのであるから、成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより、その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである」と判示。
<解説>
刑法244条1項は、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で窃盗罪、不動産侵奪罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者の刑を免除する旨規定し、刑法255条により、これが横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪に準用される。
本決定は、成年後見人の業務上横領について、
①未成年後見人の業務上横領と同様に刑法244条1項が準用されないという点を明らかにし、
②同条項の趣旨に照らし同条項所定の親族関係を量刑上酌むべき事情として考慮すべきである旨の主張を否定。
http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
「判例」カテゴリの記事
- 懲戒免職処分に先行する自宅待機の間の市職員の給料等請求権(肯定)(2023.05.29)
- 懲戒免職された地方公務員の退職手当不支給処分の取消請求(肯定)(2023.05.29)
- 警察の情報提供が国賠法1条1項に反し違法とされた事案(2023.05.28)
- 食道静脈瘤に対するEVLにおいて、鎮静剤であるミダゾラムの投与が問題となった事案 (過失あり)(2023.05.28)
- インプラント手術での過失(肯定事例)(2023.05.16)
「刑事」カテゴリの記事
- 詐欺未遂ほう助保護事件で少年を第一種少年院に送致・収容期間2年の事案(2023.05.07)
- 不正競争防止法2条1項10号の「技術的制限手段の効果を妨げる」の意味(2023.05.01)
- 保釈保証金の全額没収の事案(2023.04.02)
- 管轄移転の請求が訴訟を遅延する目的のみでされた⇒刑訴規則6条による訴訟手続停止の要否(否定)(2023.04.02)
- いわゆる特殊詐欺等の事案で、包括的共謀否定事例(2023.03.23)
コメント