強制わいせつ事件の控訴審判決で無罪とされた事例
福岡高裁那覇支
H24.2.21
女児に対する強制わいせつ事件の控訴審判決において、女児のわいせつ被害に関する供述の信用性が否定され、第一審の有罪判決が破棄されて無罪が言い渡された事例
<第一審>
女児の供述は関係者の供述とも概ね一致するなどとしてその信用性を認め、公訴事実に沿う事実を認定して、被告人を懲役1年6月の実刑に処した。
<判断>
女児の供述には看過できない変遷や不合理な点があるため、これに基づいて本件公訴事実を認めることはできない⇒原判決を破棄し、無罪を言い渡した。
<解説>
「では、なぜ虚偽のわいせつ被害を訴えるのか。」という素朴な疑問。
⇒虚偽供述の理由が1つの大きなポイントとなる。
本判決は、虚偽供述の理由は供述の信用性判断に当たって補充的な要素であるとして、前記の疑問に安易に従う判断を否定する。
その上で、信用性判断の基本要素に問題がある場合には供述が事実に基づかないことを疑うべきであるとして、本件の女児が虚偽の供述をする理由について検討している。
本件の女児の被害申告については、その内容はさておき、申告の意思自体は一貫しており、このことは、被害が事実であることの表れであるという見方もあり得る。
vs.
本判決は、自身の虚偽の説明による被害が生じることを避けるよりは、嘘を言ったことを認めて自身の信用をなくすことを避けることがあり得るから、被害申告の意思の一貫性は、女児の供述の信用性を高める事情にならないとしている。
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