法人税法164条1項の「その他の従業員」「業務に関して」の要件
最高裁H23.1.26
1.実質的に経理担当の取締役に相当する権限を与えられていた者が法人税法164条1項にいう「その他の従業者」に当たるとされた事例
2.法人税ほ脱犯において秘匿した所得を自ら領得する行為の意図と法人税法164条1項にいう「業務に関して」の要件
<判断>
丙は、被告会社の代表取締役である被告人から実質的には経理担当の取締役にそうとする権限を与えられ、被告人の依頼を受けて被告会社の決算・確定申告の業務等を統括
⇒法人税法(平成19年法律第6号による改正前のもの)164条1項にいう「その他の従業員」に当たる。
丙が秘匿した所得について自ら領得する意図を有していたとしても、そのような行為者の意図は、「業務に関して」の要件に何ら影響を及ぼすものではないと解するのが相当。
<解説>
●
法人税法164条1項を初めとする両罰規定における「その他の従業員」の意義:
最高裁昭和26.9.4:
代理人、使用人等事業主との特定の関係に基づいて事実上その業務に従事しているものを指称する旨判示。
最高裁昭和58.3.11:
法人の代表者ではない実質的な経営者も含まれる
●
行為者が秘匿所得等を自ら横領する目的でほ脱を行った場合と、両罰規定にいう「業務に関して」の要件:
最高裁昭和32.11.27:
「本件逋脱行為がたとえ判示行為者らにおいて所論横領の目的をもって行われたものであったとしても、その具体的目的の如何のごときは、本件両罰規定にいわゆる「業務に関し・・・違法行為を為したるとき」とある要件に少しの影響を及ぼすものとは解せられない」
http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html
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