国籍法12条、同法17条1項の届出、国籍取得
東京地裁H24.3.23
1.日本国籍を有する父とフィリピン国籍を有する母との間の嫡出子としてフィリピン国内で出生しフィリピン国籍を取得した原告らが、父母等が日本国籍を留保する意思表示をしなかったため、国籍法12条により出生のときにさかのぼって日本国籍を失った場合に、同条は憲法13条、14条1項に違反し無効であると主張して日本国籍を有することの確認を求めた事案において、日本国籍の確認が認められなかった事例
2.日本国籍を有する父とフィリピン国籍を有する母との間の嫡出子としてフィリピン国内で出生しフィリピン国籍を取得した原告が、父母等が日本国籍を留保する意思表示をしなかったため、出生の時にさかのぼって日本国籍を失った場合に、国籍法17条1項に基づく国籍取得の適法な届出がされたとして、日本国籍の確認が認められた事例
<事案>
日本国籍を有する父とフィリピン国籍を有する母との間の嫡出子としてフィリピン国内で出生しフィリピン国籍を取得したXらが、父母等が日本国籍を留保する意思表示をしなかったため、国籍法12条により出生の時にさかのぼって日本国籍を失ったことから、同条は憲法13条及び14条1項に違反し無効であると主張して、日本国籍を有することの確認を求め、
X1については、仮に国籍法12条が無効でないとしても、X1が国籍法17条1項に基づいて国籍取得の届出をしようとした際、地方法務局職員が届出用紙を交付してくれなかったため届出用紙を提出できなかったが、国籍法17条1項の国籍取得の届出として有効であると解すべきであるとして、X1が日本国籍を有することの確認を求めた事案。
<規定>
国籍法 第12条
出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。
国籍法 第17条(国籍の再取得)
第十二条の規定により日本の国籍を失つた者で二十歳未満のものは、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
2 第十五条第二項の規定による催告を受けて同条第三項の規定により日本の国籍を失つた者は、第五条第一項第五号に掲げる条件を備えるときは、日本の国籍を失つたことを知つた時から一年以内に法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。ただし、天災その他その者の責めに帰することができない事由によつてその期間内に届け出ることができないときは、その期間は、これをすることができるに至つた時から一月とする。
<争点>
①国籍法12条は、憲法14条1項、憲法13条に違反して無効であるか
②X1が国籍法17条1項による国籍取得の適法な届出をしたと認められるか
<説明>
●
国籍法12条の憲法適合性について
国籍法3条1項(平成20年法律第88号による改正前のもの)に関する最高裁H20.6.4:
憲法14条の1項適合性の判断の枠組みにつて、憲法10条の規定は、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかを立法府の裁量にゆだねる趣旨であると解されているが、その法律の要件によって生じた区別が憲法14条1項に違反するかどうかは、立法府の裁量を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と右の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は合理的な理由のない差別として同項に違反する。
本判決は、平成20年最高裁判決の判断枠組みに従って判断し、
国籍法12条の立法目的は国籍の本質や重国籍による弊害等を照らして合理的な根拠があると判断した上で、Xらが主張する①出生地による区別、②国籍留保の意思表示の有無による区別、③出生後に日本国籍を有する父から認知を受けた非嫡出子との間の区別のいずれについても、それらの区別と右の立法目的との間の合理的関連性がると判断。
憲法13条に違反するかについて:
国籍法12条は出生時の国籍の生来的取得の要件を定めた規定であって、Xらが主張するような国籍を奪う規定ではない⇒仮にXらが主張するような国籍保持権が憲法13条によって保障されているとしても、それを侵害するものではない。
●
X1の国籍法17条1項による国籍取得の届出の適法性について
本件の事実関係の下では、国籍法17条1項による国籍取得の届出制及び書面主義の趣旨に照らし、X1が国籍取得の届出のために必要事項記載された添付書類をすべて所持して地方法務局を訪れ、その職員に対して、それらの添付書類を全て提示して国籍取得の意思表示を明確にした時点で、書面による届出があったと認めるのが相当であると判断。
http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html
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