国際捜査共助に基づく中国での供述調書と刑訴法321条1項3号書面
最高裁H23.10.20
国際捜査共助に基づき中華人民共和国において同国の捜査官によって作成された供述調書が刑訴法321条1項3号の書面に当たるとされた事例
<規定>
刑訴法 第321条〔被告人以外の者の供述書面の証拠能力〕
被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異つた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。但し、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
<判断>
本件供述調書の証拠能力について、犯罪事実の証明に欠くことができないものといえることに触れた上、日本の捜査機関から中国の捜査機関に対し共犯者2名の取調べの方法等に関する要請があり取調べに際しては、両名に対して黙秘権が実質的に告知され、また、取調べの間、両名に対して肉体的、精神的強制が加えられた形跡はないなどの本件の具体的事実関係を前提とすれば、本件供述調書を刑訴法321条1項3号により採用した第一審の措置を是認した原判断に誤りはない。
<解説>
共犯者2名は事件後中国に帰国して、中国で本件について捜査公判が行われ、処罰されたことから、共犯者2名の供述に係る証拠は、国際捜査共助に基づき、中国の捜査機関が作成した供述調書以外にはなく、本件供述調書が刑訴法321条1項3号により証拠能力を有するかどうかが問題となった。
中国の刑訴法においては、被疑者は事件と関係のない質問に対しては回答を拒否できるとされているだけで、事件と関係のある質問に対しては回答を拒否する権利はなく、制度上被疑者には黙秘権が保障されていないと解される。
⇒
そもそも証拠としての許容性を欠くのではないか
刑訴法321条1項3号の「特に信用すべき情況」を満たさないのではないか
本判決は、本件供述調書の証拠能力を判断するに当たって、中国jの法制度やその運用のみから結論を導くことはせず、本件供述調書の具体的な作成経過等を検討した上で証拠能力を判断する手法。
http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html
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