権限のない者による公訴提起と非常上告
最高裁H24.9.18
検察官事務取扱の職務命令の発令を受けていなかった検察事務官がした公訴に基づき発付された略式命令に対する非常上告が認められた事例
<事案>
区検察庁所属の検察事務官が、休職の後に復職した際、従前受けていた検察官事務取扱の職務命令の発令を受けないまま、公訴提起及び略式命令請求をしていたことが判明し、確定した略式命令につき検事総長から非上上告が申し立てられた事案。
<規定>
刑訴法 第454条〔非常上告理由〕
検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。
<判断>
公訴提起が権限或る者によって行われていなかったことは、手続の前提となる事実の誤認ではなく、手続そのものについての誤りであるから、同裁判所が原略式命令を発付したことは、同法454条の「事件の審判が法令に違反したこと」に当たる。
<解説>
●非常上告制度
非常上告:判決確定後その審判に法令違反があることが判明した場合に、法令の解釈適用を統一することを主たる目的として法令違反を是正するために行われる非常救済手続。
有罪を受けた者に対する救済は付随的ないし反射的な効果として認められるにとどまり、個々の確定裁判における事実認定の誤りを是正することにより有罪の言渡しを受けた者を救済してその利益の保護を図る再審とは目的・機能が異なる。
●刑訴法454条の「事件の審理が法令に違反したこと」
判例の基本的立場は、非常上告の目的・機能を踏まえ、法令適用の前提事実の誤認に基づく法令違反は非常上告理由とならないが、手続そのものの構成事実に関する誤りは非常上告理由に該当する。
http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html
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