将来預金の差押と差押債権の特定
最高裁H24.7.24
普通預金債権のうち差押命令送達時後同送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分を差押債権として表示した債権差押命令の申立てが、差押債権の特定を欠き不適法であるとされた事例
<事案>
債権者が、債務者に対する金銭債権を表示した債務名義による強制執行として、相手あg他の第三債務者(銀行)に対する特定の普通預金口座に係る普通預金債権の差押えを求める申立てをした事案。
差押債権として、右普通預金債権のうち差押命令送達時に現に存する部分だけでなく、同送達時後同送達の非から起算してい1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分も表示し、差押えの順序を当該入金時期の早いものから差押債権目録の金額に満つるまでとした。
<規定>
民事執行規則 第133条(差押命令の申立書の記載事項)
2 前項の申立書に強制執行の目的とする財産を表示するときは、差し押さえるべき債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項並びに債権の一部を差し押さえる場合にあつては、その範囲を明らかにしなければならない。
<原審等>
原々審及び原審は、差押債権の特定を欠く不適法なものとして、その全部を却下すべきものとした。
⇒債権者が許可抗告。
<判断>
債権差押命令の申立てのける差押債権の特定についての最高裁H23.9.20を引用した上で、本件申立てにおける差押債権の表示のうち将来預金に関する部分については、第三債務者において、特定の普通預金口座への入出金を自動的に監視し、常に預金残高を一定の金額と比較して、これを上回る部分についてのみ払戻請求に応ずることを可能とするシステムは構築されていないなどの事情の下においては、差押債権の特定を欠き、不適法であると判断(なお、本件申立てにおける差押債権の表示のうち現存預金に関する部分については、差押債権の特定に欠けるところはないと判断して、結論としては、原決定のうち同部分を破棄し、原々決定を取り消した上、原々審に差し戻すこととした。)。
<田原意見>
差押債権が将来生ずるべき債権である場合には、その発生の確実性が求められ、それが認められないときには差押債権の特定を欠くものと一般に解されている。
差押えの対象たる普通預金口座は、将来生ずるべき債権発生の基礎となる法律関係として現に存在するものの、一般に、債権差押えの申立ての時点において、将来、同預金口座に何時、幾らの金額が入金されるかは予測がつかないのであって、発生の確実性を欠くものといえ、その点からしても差押債権の特定を欠いているのではないかとも解し得る。
<解説>
民執規則133条2項は、債権執行についての差押命令書に強制執行の目的とする財産を表示するときは「差し押さえるべき債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項」を明らかにしなければならないと規定。
最高裁H23.9.20:
大規模な金融機関の全ての店舗又は貯金事務センターを対象として順位付けをする方法による預貯金債権の差押命令の申立てにつき、「民事執行規則133条2項の求める差押債権の特定とは、債権差押命令の送達を受けた第三債務者において、直ちにとはいえないまでも、差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、確実に、差し押えられた債権を識別することができるものでなければならない」との判断基準を示し、右の方式による申立ては差押債権の特定を欠き不適法であると判断。
http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html
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