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2013年1月29日 (火)

大東市債権放棄議決事件上告審判決

最高裁H24.4.20   

1.普通地方公共団体がその議会の議決により債権の放棄をする場合におけるその長による放棄の意思表示の要否
2.住民訴訟の係属中にされた請求に係る市の損害賠償請求権を放棄sる旨の市議会の議決が適法であるとした原審の判断に違法があるとされた事例

<事案>
大阪府大東市の住民で市議会議員でもあるXが、市長であるYに対し、市の非常勤職員が退職する際に要綱に基づいて退職慰労金を支給しているkとは、条例の根拠を欠いているから、給与条例主義を定めた地方自治法204条の2等の規定に違反し、違法であると主張して、退職慰労金相当額について市長個人に対する損害賠償請求及び担当職員らに対する賠償命令の各義務付け等を求めた住民訴訟の事案、 

<一審>
本件退職慰労金は退職手当の性質を有しており、その支給は給与条例主義に違反し違法である
⇒市長に対する約269万円の損害賠償請求及び担当職員らに対する同額の賠償命令の義務付けを求めるXの請求を認容。 

<原審>
市議会が、原審口頭弁論終結前に、一審判決が任用した請求に係る権利を放棄する旨の議案を可決。

仮に市が市長個人らにた対して本件退職慰労金相当額の損害賠償請求権を取得していたとしても、それらは右議決によって消滅したとして、実質的に右議決の存在のみを理由に、それ以上何らの審理を尽くすことなく、一審判決を取り消してXの請求を棄却。 

<判断>
①普通地方公共団体による債権の放棄は、条例による場合を除き、その議会が債権の放棄の議決をしただけでは放棄の効力は生ぜず、その効力が生ずるには、その長による執行行為としての放棄の意思表示を要するものというべき。
②・・・これらの考慮されるべき事情について審理を尽くすることなく、原審摘示の事情のみを理由に直ちに岡本らに対する損害賠償請求権の放棄に係る本件議決が適法であるとした原審の判断には、審理不尽の結果、法令の解釈を誤った違法がある。

本件を原審に差戻し。 
 
<解説>
本判決は、債権の放棄は首長の担任事務に含まれ、債務の免除の法的性質をも有するから、議会が債権の放棄の議決をしただけでは放棄の効力は生ぜず、その効力が生ずるには首長による執行行為としての放棄の意思表示を要する。

議会の議決それ自体はなお内部的な意思決定行為にすぎず、対外的にその効力を発生させるためには、財産の処分(地方自治法149条6号)を担任する首長の執行行為が必要。 

市町村の存置分合又は境界変更を定める県議会の議決は行政処分に当たらないとした最高裁昭和29.1.21は、その理由として、「県議会の議決すなわち県の意思決定そのものは、それ自体として外部に対し意思が表示されるものでもなく、従ってまた外部に対して直接法律上の効果を及ぼすものでもない。・・・議決がまずあり、この議決に従って執行機関である知事が執行することによって、外部に対し県の意思が表示され、外部に対して初めて法律上の効果を生ずることとなる。」

http://www.simpral.com/hanreijihou2013zenhan.html

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