付添人選任届の追完が認められなかった事例
最高裁H24.5.1
<事案>
少年保護事件において、抗告審で付添人に選任されていない弁護士(家裁段階では付添人)から再抗告の申立てがされた事案
<判断>
・・・同弁護士は原審における付添人ではなく、また、同日までに同弁護士について付添人選任届も提出されていなかったから、同弁護士がした本件抗告申立申立ては不適法であり、抗告申立て期間経過後の同月12日に同弁護士を付添人に選任する旨の届出が追加提出されたとしても、これにより本件抗告申立てが適法となるものではない。
⇒
少年法35条2項、33条1項により抗告棄却。
<解説>
付添人の選任は、審級ごとにしなければならない(少年審判規則14条4項)
本件では再抗告を申立てた弁護士は、抗告審において付添人選任届が提出されていない⇒付添人ではない⇒再抗告権はない。
①
最高裁昭和45.9.24:
原審弁護人でない弁護士名義の控訴申立書のみが控訴提起期間最終日に原裁判所に差し出された場合、その控訴申立ては無権限者のしたものとして不適法であり、その翌日同弁護士を弁護人に選任する旨の届出が追加提出されたとしても、これにより右不適法な控訴申立てが適法有効となるものではない。
②
原審弁護人が上告趣意書提出期間内に上告趣意書を提出し、同期間経過後になって初めて上告審での弁護人選任届を出した事案について弁護人の選任届の追完を認めた最高裁昭和29.7.7.
①②の違いは、裁判の確定に関することと同一審級ないに関することに決定的な違いがあり、このことは、上訴権回復を許す要件と上訴趣意書差出し期間経過を救済する要件をとを対比することでもうかがえる。
刑訴法 第362条〔上訴権の回復〕
第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴をすることができなかつたときは、原裁判所に上訴権回復の請求をすることができる。
刑訴規則 第238条(期間経過後の控訴趣意書)
控訴裁判所は、控訴趣意書を差し出すべき期間経過後に控訴趣意書を受け取つた場合においても、その遅延がやむを得ない事情に基くものと認めるときは、これを期間内に差し出されたものとして審判をすることができる
刑訴規則 第266条(準用規定)
上告の審判については、特別の定のある場合を除いては、前章の規定を準用する。
本決定は、少年事件においても、 審級代理の原則があり、審級ごとに付添人選任届を提出する必要があり、抗告申立て期間経過後には、付添人選任届が追完されないことを確認したもの。
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