強盗の機会
東京高裁H23.1.25
<主張>
最後の強取行為から被害者に覚せい剤を注射して山中に放置するまで約6時間経過しており、しかも、強盗が行われた場所と被害者に覚せい剤を注射して放置した場所とは約50キロメートル離れているから、本件強盗の手段となる行為と被害者の死亡との間に関連性は認め難いと主張。
<判断>
本件事実関係の下では、被告人は、強盗に引き続いて、当初からの計画に従い、強盗の罪跡を隠滅するために、被害者に覚せい剤を注射して放置する行為に及び、被害者を死亡させるに至ったと認められ、このような強盗の罪を隠滅する行為は強盗と一体のものと評価できる
⇒
被害者の死亡の原因となった覚せい剤を注射するなどした行為は強盗の機会に行われたということができる。
<解説>
刑法240条の強盗致死傷罪は、強盗の手段としての暴行・脅迫によって生じた場合だけではなく、強盗の機会に死傷の結果が生じれば足りるとする機会説が判例通説。
否定例:
強盗殺人の犯人らが、犯行の発覚を防ぐために顔を見知った被害者を殺害しようと共謀し、強盗殺人の犯行から約5時間後、被害者を呼び出して殺害した事案(最高裁昭和23.3.9)。
http://www.simpral.com/hanreijihou2012kouhan.html
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