製品の欠陥と刑法上の注意義務
①ハブが重要保安部品であり、走行中に輪切り破損するという事故が発生すること自体が想定外のこと
②類似事故事案の処理の時点で7年余りの間に16件という輪切り破損事故が発生
⇒
その時点でハブの強度不足のおそれが客観的に認められる状況にあったことは明らかであり、品質保証部門の担当グループ長や部長であった被告人らも、そのことは十分認識していたと認められる。
⇒
ハブの輪切り破損による人身事故の発生につき被告人らの予見可能性を認めた。
・・・三菱自工でリコール等の改善措置に関する業務を担当する者においては、リコール制度に関する道路運送車両法の関係規定に照らし、ハブを装備した車両につきリコール等の改善措置の実施のために必要な措置を採ることが要請されていただけでなく、刑事法上も、そのよな措置を採り、強度不足に起因するハブの輪切り破損事故の更なる発生を防止すべき注意義務があった。
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被告人らにリコール等の改善措置の実施のために必要な措置を採るべき業務上の注意義務があった。
最高裁H24.2.8
製品の欠陥等に起因して事故等が発生した場合に、その製造者や流通に関与した者について業務上過失致死傷罪が争われた先例:
薬害エイズ厚生省ルート
パロマガス湯沸器事件
薬害エイズ事件(最高裁H20.3.3):
①非加熱血液製剤を使用した場合には、HIVに感染してエイズを発症する者が出現して多数の者が高度の蓋然性をもって死に至ることがほぼ必然的なものとして予測された
②当時は非加熱製剤の危険性についての認識が関係者に必ずしも共有されていたとはいえず、医師や患者においてHIV感染の結果を回避することが期待できなかった
③国が明確な方針を示さない限り、引き続き、安易な販売、使用が行われるおそれが具体的に生じていた
⇒
厚生省薬務局生物製剤課長として、同省でエイズ対策に関して中心的な立場にあった被告人につき、薬務行政上必要かつ十分な対応を図るべき刑法上の注意義務があることを認めた。
この種事案については、事案ごとに、当該製品の危険性や、それに対する支配、管理性などの事情を実質的、総合的に考慮し、刑法上の注意義務としての回収等の義務を肯定できるかを判断。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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