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2012年10月28日 (日)

被疑者の弁護人の人数超過許可決定に対する刑訴法419条により抗告申立ての可否

刑訴法433条は、特別抗告を許す対象を、刑訴法により不服を申し立てることができない決定又は命令に限っている
⇒本件申立ての適法性に関しては、原決定に対して刑訴法419条所定の高裁への抗告(通常抗告)ができるかが問題。

刑訴法419条は、裁判所のした決定に対しては、即時抗告を認める規定がある場合の外、通常抗告ができる旨を定めつつも、同条但し書が、刑訴法に特別の定める場合はこの限りでない旨を規定。

特別の定めとして、刑訴法420条1項が、裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、即時抗告を認める規定がある場合以外は抗告できない旨を規定。

本件申立ての適否に関しては、原決定が同項所定の「訴訟手続に関し判決前に関した決定」に当たるか否かが問題。

訴訟手続に関し判決前にした決定」の意義:

最高裁昭和28.12.22:
判決を目的とする訴訟手続に関しその前提としてなす個々の決定をいう」
(同条の趣旨について)「これらの決定にについては一々独立に不服を許さなくても、終局の判決の当否に対する救済はできるので、これらの決定に対しては原則として抗告することは許さないものとした」

被告人の弁護人の数を制限する決定については、それが「その性質上独立して上訴の申立をすることが許されない裁判に属」するとして、刑訴法44条により決定に理由を付する必要がない旨を判示した高裁判例(名古屋高裁昭和28.7.18)がある。

同決定が「訴訟手続に関して判決前にした決定」に当たることを前提とした判断。

被疑者の弁護人の数の制限に関する決定については、学説は分かれる。
被疑者弁護は、起訴された上で判決まで至ることを想定して、判決を視野に入れてなされるという面があるものの、その一方で、不起訴を目指してなされることも少なくない。
⇒被疑者の弁護人の数の制限に関する決定が、前記大法廷決定のいう「判決を目標とする訴訟手続に関しその前提としてなす個々の決定」に当たるとは言い難いように思われるし、実質的にも、その決定に誤りがあった場合に、終局判決に対する上訴において救済を図ることができるとは必ずしも言えないにように思われる。

最高裁H24.4.20

被害者の弁護人の人数超過許可決定(本件原決定のように請求人数よりも少ない人数を指定するもの)に対しては、刑訴法419条により高等裁判所に抗告の申立てをすることができるのであるから、直接当裁判所に申し立てられた本件抗告は、同法433条1項の要件を備えない不適法なものである。
⇒抗告棄却 

刑訴法420条1項所定の「訴訟手続に関し判決前にした決定」に当たらないと解することを前提とした判断。
その趣旨は、請求却下決定にも当然に妥当する。

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