2018年8月14日 (火)

認知症で公正証書遺言の遺言能力が否定された事案

東京地裁H29.6.6      
 
<争点>
本件遺言(平成23年6月の公正証書遺言)の有効性であり、遺言能力の有無が争われた。 
 
<主張>
原告:
遺言者は、本件遺言当時、アルツハイマー型認知症を発症しており、
長谷川式簡易知能評価スケールの検査結果や介護認定記録などから窺えるように、短期的記憶力や認識障害がみられ、記憶力を前提とした判断能力が著しく低下
⇒遺言者の遺言能力が欠如していた旨を主張。 

被告:
アルツハイマー型認知症を発症していたものの、その程度は重要なものではない⇒遺言者は遺言能力を欠如していなかった。
 
<判断>
①遺言者は、平成18年ころから物忘れが目立つようになり、同年11月以降は長谷川式簡易知能評価スケールにおいて16点ないし18点で推移
②遺言者は、遅くとも平成19年5月までにアルツハイマー型認知症であると診断された
③遺言者は、平成20年10月、妻が脳梗塞を発症して入院し、その後は有料老人ホームに入所することになり、独居生活となったため、被告は、遺言者のために要介護認定・要支援認定を申請し、同年11月、被告が同席して同認定のための調査が行われたが、
その際、遺言者は服薬をしているがその認識がなく、
電話の内容等もすぐに忘れてしまうこと、
1日の予定をホワイトボードに記載してもこれを理解及び記憶することができずに被告に何度も電話してくることが説明されたほか、
遺言者は、当時の季節と月を答えることができず、
調査中、7回も妻がどこにいくかを尋ね、妻がいないのに自分はどのように生活しているかを確認
していた
平成20年11月に作成された主治医意見書では、日常生活自立度は「J2」及び「IIb」の各欄にチェックが付され、認知症の中核症状として短期記憶に問題があることや自分の居場所が分からなくなることが見られる旨が指摘されている
⑤平成21年3月、被告の同席の下、要介護認定・要支援認定のための調査が行われたが、遺言者は季節に適した服装を選択することができないこと、
服薬について、薬を飲む時間や量を理解できないため、家族が食事と一緒に準備しているが飲み忘れがあること、
金銭管理について、計算能力及び管理能力はないこと、
電話をかけ又はこれを受けることはできるが、電話をかけたことや話の内容等をまったく覚えていないこと、
ホワイトボードに1日の予定が書いていあるが理解しておらず、自分では何をすべきか分からずに1日に何度も家族に電話をかけて聞くこと、
同調査日に家族と病院に行ったことを覚えていないこと、
季節の理解ができず、寒い日に暖房をつけず薄着で震えていたことがあったこと、
妻が入院していることがわからず不安になっていること、
習慣的なことを除き、直前の会話の内容や出来事を記憶していないこと
などが説明され、また、
調査中にジュースを飲みながらビールを飲んでいると何度も繰り返し話していた
⑥平成21年3月の主治医意見書にも前記平成20年11月の主治医意見書ど同内容の記載があること、
⑦平成23年3月、被告の同席の下、要介護認定・要支援認定のための調査が行われたが、遺言者は配膳された通常食を自力で食べるが、食べたすぐあとに「ご飯は?」と被告に聞くこと、
1人だとヘルパーが来る日に散歩に出かけてしまい不在となることが月2回ほどあること、
品物を見せて3分後に聞いても忘れて答えられないこと、
散歩も決まった場所でないと外出しないが、時々帰らず被告が探しに出ること、
同じ質問ばかり何度も被告にしており、1分おきに聞くために被告がこれを非難すると感情が混乱して泣くことがあること、
介護関係者の顔を忘れているほか、
東北大地震のニュースを見るたびに新鮮に驚き、被告との伝言や約束事もできないこと、
薬の飲み忘れが多いこと、
被告が金銭管理しているが、行きつけのパン屋で同じパンを繰り返し買って食べてしまうほか、会計も定員に任せており、被告からは何度も注意を受けて体重も増えていること、
会員の協力もありテニスクラブに通っているが、それ以外の場所に行けず、動作上はスポーツができるが、テニスクラブは休業であることを被告が伝えたにもかかわらず、直後に出向いてしまったこと
などが説明されるなどした
平成23年3月の主治医意見書には、前記平成21年3月の主治医意見書と同様の記載があるほか、認知症の周辺症状として、「徘徊」の欄にチェックが付されていること
など

遺言者が本件遺言を行った当時、アルツハイマー型認知症により、短期記憶障害が相当程度進んでおり、その他の症状等や遺言内容が複雑であることなどことなども併せて考慮すると、
遺言内容を理解及び記憶することができる状態ではなかった蓋然性が高い

遺言能力は欠いており、本件遺言は無効

判例時報2370

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器械体操部での事故と学校側の損害賠償責任(肯定)

大阪高裁H29.12.15      
 
<事案>
Y(大阪府)の設置する高等学校の器械体操部に所属していたX1が部活動の練習中に鉄棒から落下して負傷し、重大ない後遺障害が残った事故。
X1とX1の母であるX2や姉であるX3・X4が、当時同部の顧問であったP1教諭、外部指導者であったP2コーチには、注意義務違反があり、これによってXらが損害を被った
⇒Yに対し、国賠法1条1項に基づき、損害賠償金の支払を求めた。 
 
<原審>
請求をいずれも棄却。 
 
<判断>
P2コーチがX1に対し通し練習に関する指導をするにあたっては、X1が前方車輪とは逆方向に回転を始める状態になった場合には、鉄棒から手を離して着地する危険回避方法をとらずに他の不確実な危険回避方法をとろうとすることのないように、必ず鉄棒から手を離して着地するよう指導すべき注意義務があり、
P2コーチには、通し練習に関する指導につき、注意義務を怠た過失がある。

P2コーチには、X1が鉄棒を逆手握りで握りつづけたまま前振りになったときに、補助行為によってX1の回転を止めることができるよう、自ら補助者として鉄棒下の適切な位置に立つべき注意義務があり、P2コーチには、自ら補助者として鉄棒下に立つことなく、鉄棒から約10メートル離れた位置に立ってX1の演技を見ていたことにつき、注意義務を怠った過失がある。
 
<解説>
クラブ活動中の生徒の事故について、学校側の責任を追及する方法としては、
債務不履行責任として構成する方法と、
不法行為責任として構成する方法
がある。

課外のクラブ活動であっても、それが学校の教育の一環として行われるものである以上、その実態について、学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務がある(最高裁)。
注意義務の具体的内容として、

事前注意義務
指導監督上の注意義務
事故対応義務
などが挙げられ、

注意義務違反の存否の判断にあたっては、
クラブ活動の内容、生徒の学年や年齢、競技等の経験、健康状態、生徒側の指導違反等、様々な要素が考慮される。

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2018年8月13日 (月)

再審請求弁護人の死刑確定者との秘密面会の制限と国賠請求(肯定)

大阪高裁H29.12.1      
 
<事案>
死刑確定者として大阪拘置所に収容されているX1並びにその再審請求のために選任された弁護人であるX2~X5が、
大阪拘置所長に対し、X1と面会する際に、
120分の面会を認めること、職員の立会いのない面会を認めること、パソコンの使用を認めることを要請したにもかかわらず、
同拘置所長が面会時間を60分に制限したこと、職員の立会いのない面会を許さなかったこと、パソコンの使用を認めなかったことが違法であると主張し、
Y(国)に対し、国賠法1条1項に基づき、200万円の賠償金の支払を求める事案。
 
<判断>
秘密面会(拘置所職員の立会いのない面会)の利益は、死刑確定者だけでなく、再審請求弁護人にとっても重要なもの

刑事施設の長は、死刑確定者の面会に関する許否の権限を行使するにあたり、その規律及び秩序の維持等の観点からその権限を適切に行使するとともに、
死刑確定者と再審請求弁護人との秘密面会の利益をも十分尊重しなければならない。

死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に関する打合せをするために秘密面会の申出をした場合に、これを許さない刑事施設の長の措置は、特段の事情のない限り違法となると解するのが相当。
but
本件においては、特段の事情があったものとは認められない。

違法

大阪拘置所長は、120分の秘密面会の申出につちえ、漫然と従前の例を踏襲して面会の時間を60分に制限

裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してXらの秘密面会をする利益を侵害したものとして違法

Xは、秘密面会の際、パソコンの使用の許可を求めたのに対し、大阪拘置所長は、その使用により拘置所の規律及び秩序を害する結果を生ずる具体的なおそれがあるかどうかについて考慮することなく、これを認めない措置をとった。

裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、違法となる。

Y(国)に対して103万7540円及び遅延損害金の支払を求める限度で、Xらの請求を認容。
 
<解説>
秘密面会の申出の許否に関する判断基準:
これを許さない刑事施設の長の措置は、
秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ、又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要が高いと認められるなど特段の事情がない限り
裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする権利を侵害するだけでなく、
再審請求弁護人の固有秘密面会をする利益をも侵害するとして、
国賠法1条1項の適用上違法となる。
(最高裁H25.12.10)

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2018年8月 9日 (木)

相続分の譲渡と特別受益(肯定)

東京高裁H29.7.6      
 
<事案>
遺留分減殺請求権の行使による不動産の移転登記手続等の請求。 
X1、X2及びYは、父Aと母Bの子。
父Aの相続に際しては、Bは、法定相続分2分の1をYに無償で譲渡し、X2も法定相続分6分の1をYに譲渡
⇒X1の相続分6分の1、Yの相続分6分の5として、遺産分割審判により、Aの遺産が分割された。
その後Bが死亡したが、B固有の遺産はなし。

Xらは、Bの遺留分算定の基礎となる財産がAの法定相続分として有していた相続分のみ⇒Yに対し、遺留分減殺請求権を行使。
 
<争点>
相続分の譲渡が特別受益の対象となる贈与に当たるか。 
 
<判断>
本件相続分の譲渡は、生計の資本としての贈与であり、特別受益に該当。
⇒Xの主張を肯定。

 
<規定>
民法 第903条(特別受益者の相続分)
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
 
<解説>
相続分の譲渡が「贈与」(民法549条)に当たり、それが「生計の資本」(民法903条1項)としてされたのであれば、特別受益として、遺留分算定の基礎となる。
本件は、相続分の贈与が特別受益に当たり、遺留分算定の基礎となって減殺の対象となる贈与に該当することを明らかにしたもの。

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2018年8月 8日 (水)

第三債務者が差押債務者に対する弁済後に差押債権者に更に弁済をした場合と債務者破産に係る否認権行使

最高裁H29.12.19   

Aに対して貸金債権を有していたYは、AのB社に対する給料債権を差し押さえ、平成22年4月、その債権差押命令がB社に送達。
butB社は、その後も給料の全額をAに支払った。

Yは、平成25年10月頃、B社に対し、Aの給料債権のうち本件差押命令により差し押さえられた部分(「本件差押部分」)の支払を求める支払督促を申立て、B社は、督促異議の申立てをする一方、
平成26年1月までに、
Aに支払うべき給料から合計26万円を控除し、これを本件差押部分の弁済としてYに支払った。(「本件支払1」)

督促異議により移行した訴訟⇒平成26年2月、B社が本件差押部分の弁済として141万905円をYに支払うなどを内容とする和解が成立し、B社はこれを支払った。(「本件支払2」)
 
破産者Aの破産管財人Xが、
破産手続開始前の決定前にAのB社に対する給料債権を差し押さえて取り立てたYに対し、
破産法162条1項1号イの規定により、
その取立による弁済を否認し、
これによりYがB社から受領した金銭に相当する金額等の支払を求める事案。
 
<規定>
破産法 第162条(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。
二 破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。

民執法 第155条(差押債権者の金銭債権の取立て)
金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
2 差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。

民執法 第145条(差押命令)
執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない

民法 第481条(支払の差止めを受けた第三債務者の弁済)
支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
2 前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。
 
<原審>
本件支払は、いずれもAの財産である給料債権からの支払であり、これによりAのYに対する貸金債権が消滅する⇒破産法162条1項の規定による否認の対象となる。 
 
<判断>
債権差押命令の送達を受けた第三債務者が、差押債権につき差押債務者に対して更に弁済した後、差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合、
後者の弁済は、破産法162条1項の規定による否認権の対象とならない。

Xの請求のうち本件支払2に係る部分を棄却。
 
<解説> 
●破産法162条1項1号は、
破産者が支払不能になった後にした既存の債務の消滅に関する行為等について、破産財団のために否認することができると規定。 
本件支払2については、これをYに対してしたのが破産者A自身ではなく第三債務者B社破産者に代わって第三者が弁済をする場合に破産法162条1項による否認が認められるか否かが問題。
 
●旧法下の判例:
破産者が破産債権者を害することを知ってしたことを要件とする故意否認(旧破産法72条1号)については、
破産者による害悪ある加功の事実を要する。
(最高裁昭和37.12.6)

これを要件としない危機否認(旧破産法72条2号)については、
破産者の意思に基づく行為のみならず、破産者の財産をもって債務を消滅させる効果を生ぜしめる場合も否認対象行為に含む。
(最高裁昭和39.7.29)

学説:
破産者の詐害意思が要求される詐害行為類型(破産法160条1項)については、破産者自身の行為又はこれと同視される第三者の行為であることが必要。
災害医師の不要な偏頗行為類型(破産法162条1項)については、効果においては三者の行為と同視される第三者の行為であれば否認の対象となる。
 
差押債権者が民執法155条1項の規定により第三債務者から差押えに係る金銭債権を取り立ててその弁済を受けた場合、通常は、 差押債務者の財産である債権が差押債権者に対して弁済されることにより、その限度で差押債務者の差押債権者に対する債務が弁済されたものとみなされる(同条2項)。

差押債務者が破産者であれば、破産者の財産をもってその債務を消滅させる効果を生ぜしめたものとして偏頗行為類型の否認の対象となる。
but
本件において否認の対象となるか否かが問題となるのは、B社が、Aに給料債権の弁済(第一弁済)をした後に、Yの取立てに応じてした更なる弁済(第2弁済)

債権差押命令が第三債務者に差押債務者への弁済を禁止(民執法145条1項)⇒第1弁済は無効⇒Aの給料債権は第1弁済によって消滅せず、AはB社に対し弁済受領額相当の不当利得返還義務を負う
⇒第2弁済によりAの財産であるAの給料債権をもってAのYに対する債務を消滅させることになり、第2弁済は否認権の対象となる。
but
民法481条1項は、支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済したときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者請求することができると規定しており、

判例:
第三債務者が差押債務者にした給付は、差押債務者に対する関係では弁済として有効であるが、差押債権者には対抗できず、その限りで無効(相対的無効)。

第1弁済は、Aに対する関係では有効であり、これによってAの給料債権者消滅するのであって、
B社がYの取立に応じて更に第2弁済をしなければならないのは、民法481条1項により、Aへの弁済による本件差押部分の消滅をYに対抗できないことによるものにすぎず、第2弁済によって本件差押部分が消滅するものではない。

第2弁済によるAのYに対する債務の消滅は、破産者であるAの財産(給料債権)によるものとはいえない

本件支払2は、Aの財産を減少させるものではなく、破産財団を損なうものとはいえない。
本件支払2により、B社はAへの求償権(民法481条2項参照)が発生して破産債権となっているが、破産債権となるべきYのAに対する債権が消滅している(本件支払2の否認が認められれば、破産法169条によりこの債権が復活し、破産債権となる)
本件支払2は、破産債権者を害するとはいえず、有害性を欠く。

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2018年8月 7日 (火)

行政文書の開示を求める民事上又は公法上の請求権を被保全権利とする仮処分命令の申立(否定)

大阪地裁H29.10.2      
 
<事案>
近畿財務局長に対し、
学校法人Aによる国有地払下げ問題に関連する行政文書の開示請求(「本件開示請求」)をし、一部開示決定を受けたXが、
本件処分に基づき開示された行政文書(「本件開示文書」)の他にも開示請求をした行政文書が存在するはずであると主張し、当該未開示の行政文書の開示を求める民事上又は公法上の請求権を被保全権利として、
本件仮処分対象文書の変更、改ざん等を禁ずる旨の仮処分を求めた保全事件
の事案。 
 
<判断>
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(「情報公開法」)の各規定を引用し、
同法の定める情報公開制度のの下において、同法3条の規定により行政文書の開示の請求をした者(開示請求者)は、
行政機関の長が同法9条1項の規定により行政文書の全部又は一部を開示する旨の決定(開示決定)をすることによって初めて、当該開示決定に係る行政文書の開示を受けることができる法的地位に立つ

開示決定がされていない特定の行政文書について、国ないし行政機関の長等に対し、その開示を求める請求権を有する余地はない。 

本件における事実関係の下において、本件処分が本件仮処分対象文書を開示する趣旨を含むものと解する余地はなく、
本件処分のほかに近畿財務局長により本件開示請求に対する応答として開示・不開示等の決定がされたこともない。

本件仮処分対象文書について開示決定がされたものと認めることはできない。

Xが国又は近畿財務局長に対して本件仮処分対象文書の開示を求める民事上又は公法上の請求権を有するものということはできない。

被保全権利は認められず、本件仮処分命令の申立てを却下。

 
<規定>
情報公開法 第3条(開示請求権)
何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(前条第一項第四号及び第五号の政令で定める機関にあっては、その機関ごとに政令で定める者をいう。以下同じ。)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる

情報公開法 第5条(行政文書の開示義務)
行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
・・・・・
 
<解説>
●本決定:
情報公開制度の仕組みに照らし、開示決定がされていない特定の行政文書について、その開示を求める具体的な請求権が生ずることはない旨を説示。
 
●仮に、特定の行政文書について開示決定がされたにもかかわらず開示の実施がされない場合に、開示決定を受けた者が訴訟において国等に対し当該行政文書の開示を請求することができるか?
同請求権を被保全権利として仮処分命令の申立てをすることができるのか? 
 
●本決定:
仮に本件開示文書のほかにも本件開示請求に係る行政文書が存在するとすれば、本件開示請求に対する応答として本件開示文書についてのみ開示決定をするなどした近畿財務局長の対応に一定の瑕疵があったものと評価される可能性があることに言及。

行政機関の長が、開示請求がされた文書を殊更に狭く特定した上で開示決定をした場合に、開示対象文書の特定に不服がある開示請求者が、訴訟手続き上、どのように争えるか?

A:本件開示対象とされるべきであった行政文書については実質的に不開示決定がされたものと見てその取消訴訟を提起する方法
B:不作為の違憲確認訴訟(行訴訟3条5項)
いずれの方法によるにしても、仮の救済としては仮の義務付け(行訴法3条5項)が考えられ、これらを本案として仮処分命令を発令する余地はないように思われる。

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2018年8月 6日 (月)

自然環境保護団体等の原告適格が否定された事例

札幌高裁H30.1.17      
 
<事案>
リゾート事業を営む会社がスキー場建設計画に伴い、
東大雪支署長(国)から国有財産法18条6項の規定による国有林野の使用許可処分(「本件使用許可」)を、
北海道知事から北海道自然環境等保全条例30条1項の規定に依る開発行為の許可処分を
それぞれ受けた。

十勝地方の自然保護団体、エゾナキウサギの研究者及びエゾナキウサギの保護活動を目的とする組織の代表者(「原告ら」)が、国及び北海道に対し、
前記各処分は、生物の多様性に関する条約(「生物多様性条約」)に違反し無効であることの確認
を求めるとともに、
国及び北海道に対し、国賠法1条1項に基づき、慰謝料の支払を求めた事案。 
 
<争点>
本件各処分の名宛人でない原告らが、行訴法36条にいう本件各処分の無効確認を求める「法律上の利益を有する者」に当たるか? 
 
<規定>
行訴訟 第36条(無効等確認の訴えの原告適格) 
無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

行訴法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
 
<解説>
行訴法36条にいう「法律上の利益を有する者」の意義については、取消訴訟の原告適格についての同法9条1項の「法律上の利益を有する者」と同義であり、
当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれあるある者をいい、
当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する
(最高裁H4.9.22)

平成16年の行訴法改正により新設された同法9条2項は、行政処分の名宛人でない第三者について原告適格の有無を判断する際の解釈指針を規定しているところ、
最高裁判所(最高裁H17.12.7)は、いわゆる小田急高架事件において、
処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨および目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び及び性質並びにこれが害される態様及び程度を勘案すべきものである」
などとして、前記解釈指針に従って原告適格を判断すべきである旨を説示。
 
<原審>
①本件使用許可について、原告らの主張する生物多様性が保全された良好な自然環境を享受する利益は、不特定多数の者が等しく享受することができる内容及び性質を有するものであり、
その利益を享受する主体の外延に何らの限定も付すことができない

専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめるべき不特定多数の者の具体的利益ないし一般的公益そのもの

本件使用許可を定めた行政法規が、前記利益をそれが帰属する個々人の個別的利益を含めるものと解することはできず、また、原告らの主張する本件使用許可の手続きで意見を述べる権利についても、法令がこのような権利を地域の住民等に手続上の権利ないし個別的利益として付与し、法律上保護すべきものとする趣旨を含むものと解することはできず
原告らの主張する生物多様性条約及びそのガイドライン等を踏まえてもその結論は変わらない。

原告らの原告適格を否定。

②本件開発許可についても、同様の理由で、原告適格を否定。
 
<判断>
原審の判断を支持。 
生物多様性条約及びそのガイドラインの規定から、
公益とは全く別のナキウサギ研究集団(セクター)ないし地域の集団(セクター)の一員として個別的利益を侵害された旨の原告らの控訴理由について、
生物多様性条約が、地域の住民や生物多様性条約にいう知識を有する者等に対して、自国の国内法令によらず直接、手続上の権利なしい個別的利益を付与していると解することはできない

判例時報2370

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2018年8月 4日 (土)

心神喪失等の状態で重大な他害行為⇒医療及び観察等に関する法律と憲法違反(否定)

東京高裁H29.7.14    
 
<事案>
対象者が、神奈川県内の書店において、被害女性(当時52歳)に対し、突然体当たりしてその場に転倒させる暴行を加え、よって、同人に全治約2か月間を要する仙椎骨折の傷害を負わせた
検察官は、対象者を心神耗弱者と認め、本件対象行為について公訴を提起しない処分をするとともに、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者の医療及び観察等に関する法律33条1項の申立て
 
<原審>
鑑定人作成の鑑定書及び横浜保護観察所長作成の生活環境調査報告書を含む1件記録に加え、審判期日の結果等

医療観察法42条1項1号により、対象者に対し、医療を受けさせるために入院させる旨決定。 
 
<抗告申立>
原審付添人は、
①医療観察法は、そもそも、憲法14条1項、22条1項及び31条に反するほか、
②原決定には、対象者について、医療観察法42条1項1号所定の入院をさせて同法による医療を受けさせる必要があると認めた点等において決定に影響を及ぼすべき重大な事実誤認がある。 
 
<判断>
①②を否定し、抗告棄却。 

判例時報2369

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2018年8月 3日 (金)

被告人に訴訟能力欠如で回復の見込み無し⇒公訴棄却の可否(肯定)

最高裁H28.12.19      
 
<事案>
統合失調症に罹患していた被告人が、平成7年5月3日、愛知県内の神社の境内で、面識のない2名を文化包丁で刺殺⇒殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反により起訴。 
 
<規定>
刑訴法 第338条〔公訴棄却の判決〕
左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
四 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。
 
<判断>
被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後、訴訟能力の回復の見込みがなく公判手続の再開の可能性がないと判断される場合、裁判所は、刑訴法338条4号に準じて、判決で公訴を棄却することができると解するのが相当である。 
 
<規定>
刑訴法 第314条〔公判手続の停止〕
被告人が心神喪失の状態に在るときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、決定で、その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し、無罪、免訴、刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には、被告人の出頭を待たないで、直ちにその裁判をすることができる。

刑訴法 第257条〔公訴の取消し〕
公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。

刑訴法 第339条〔公訴棄却の決定〕
左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。
三 公訴が取り消されたとき。
 
<解説>
●刑訴法314条1項は、被告人が「心神喪失の状態」すなわち訴訟能力を欠くh状態にあるときは、原則として「その状態の続いている間公判手続を停止」しなければならない。
被告人に訴訟能力の回復の見込みがない⇒検察官が同法257条により公訴を取り消せば、裁判所は、同法339条1項3号により、公訴棄却の決定をもって手続を打切り。 
but
公判手続が停止された後、その回復の見込みがない場合で、検察官が公訴を取り消さないとき、裁判所がいかなる措置をとることができるかについて、明文規定なし。
 
●本判決:
訴訟手続の主催者である裁判所において、被告人が心神喪失の状態にあると認めて公判手続を停止する旨決定した後、被告人に訴訟能力の回復の見込みがなく公判手続の再開の可能性がないと判断
事案の真相を解明して刑罰法令を適正迅速に適用実現するという刑訴法の目的(同法1条)に照らし、形式的に訴訟が係属しているにすぎない状態のまま公判手続の停止を続けることは同法の予定するところではなく、裁判所は、検察官が控訴を取り消すかどうかに関わりなく、訴訟手続を打ち切る裁判をすることができるものと解される。

刑訴法はこうした場合における打切りの裁判の形式について規定を置いていないが、
訴訟能力が後発的に失われてその回復可能性の判断が問題となっている場合⇒判決による公訴棄却につき規定する同法338条4号と同様に、口頭弁論を経た判決によるのが相当

刑事訴訟の趣旨等に照らし訴訟係属状態を維持すべきではないという観点から形式裁判である公訴棄却により訴訟手続を打切り判断の内容等に照らし判決でこれを行うことを導き、刑訴法338条4号に準じて処理するというアプローチ。

判例時報2369

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2018年8月 2日 (木)

告発等を行った私立小学校の教頭の普通解雇(肯定)

東京高裁H28.12.7      
 
<事案>
Y4は、X1には、
パワーハラスメントを受けたとの虚偽の事実を述べて慰謝料請求をしたこと(解雇事由1
不当な目的で本件告発を行い、Y4及びY1の名誉と信用を毀損したこと(解雇事由2
小中高一貫教育を掲げるY4の方針に公然と反対し、多数の教員に虚偽の事実を述べてY4及びY1の名誉と信用を毀損したこと(解雇事由3
等の解雇事由がある
⇒X1を主位的に懲戒解雇し、予備的に普通解雇した。

X1は、Y4に対し、本件解雇は無効であるとして、本件小学校の教頭としての地位の確認を求めるとともに、
Y1ないしY3に対し、本件告発等に対する報復行為として本家解雇その他嫌がらせを行った共同不法行為に基づく損害賠償を求めて本件訴訟を提起。
 
<原審>
本件解雇は解雇事由が存在しない又は解雇権を濫用するもので無効
⇒X1が雇用契約上の地位にあることを確認するとともい、未払賃金の支払を認めた。
but
X1の損害賠償請求は棄却。
   
Y4が控訴
X1も、原審敗訴部分の取消し及び賞与相当額の支払等を追加して控訴。
 
<判断> 
懲戒解雇としては無効であるが、普通解雇としては有効
⇒X1の地位確認請求及び未払賃金請求を棄却。
 
●解雇事由1:
面談に同席することは本件小学校の教頭としての職責に属する行為であり、
X1は、自らが希望する形での業務監査にY4が応じることを条件に面談に同席すると述べて同席を拒んだ上、最終的には自らの意思で面談に同席
客観的にパワーハラスメントにあたると評価しうる状況ではなかった

X1が謝罪及び慰謝料200万円を請求したことは、事実の評価を曲げて自らの主張を通そうとするものであって、普通解雇事由に該当

●解雇事由2:
本件告発は監督権限を有する県に対し(私立学校振興助成法を参照)、財務状況の調査に加え、横領・背任等の刑罰法令に違反する行為があるとして、Y1及びY2を理事から解職することを求めるもの
Y1及びY2の名誉を傷つけるのみならず、Y4の信用を害し、業務に支障を生じさせるおそれがある
根拠なく誤った告発を行うことは、Y4の定める普通解雇事由に該当

Y4において財務状況の悪化の懸念を裏付ける一応の状況があり、県によりサッカースクールとの業務委託契約の見直し等の指導
but
本件告発は、いずれも横領・背任等の刑事法令に違反するものとは認められず、根拠は薄弱で、容易に確認できる事項の確認もなされていない(ex.X1は、Y4から財務諸表の分析の機会を与えられながらこれを行っていない)
X1の本件告発は普通解雇事由に該当する。

●解雇事由3:
X1は十分な調査と裏付けのないまま、本件小学校の教員ほぼ全員を一同に集め、 Y1及びY2が刑罰法令に反する行為を行っており、本件小学校の財務状況が極めて悪化しているとの虚偽の事実を指摘して、本件小学校を独立採算制とするという、小中高一貫教育を行っているY4の経営方針の根幹に触れる持論を展開
普通解雇事由に該当
 
解雇事由1ないし3に基づく解雇が社会通念上相当性を欠くとはいえない
 
<解説> 
解雇の合理性及び相当性に加え、公益通報法3条によって解雇が無効となるかも争点とされた。
公益通報法3条は、通報が不正な目的でない限り、公益通報をしたことを理由として行った解雇を無効としている。
but
その要件は通報先によって異なっている。
労務提供先等に対する通報:通報対象事実が生じたと思料すれば足りる
権限を有する行政機関に対する通報:通報対象事実が生じたと信ずるに足りる相当の理由を必要
その他の外部通報先への通報:さらに具体的な用件。

通報対象事実が生じたと「信ずるに足りる相当の理由」
単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容を裏付ける内部資料等がある場合や関係者による供述がある場合をいい、
通報者は労働者として通常知りうる範囲内で、これらの要件を立証する責任を負う

本判決:
X1の本件告発は、薄弱な根拠に基づき、容易に可能な裏付け調査すら行わないまま行われたものであり、
通報対象事実である横領又は背任の事実が生じたと信ずるに足りる相当の理由があったとは認められない

公益通報法3条2号の適用を否定

判例時報2369

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