「企業不祥事の初期対応・・・企業の自浄作用と監査役の視点」のメモ
監査役協会の講演を終えての自分用のメモ
<●視点>
①(法的に)しないといけない場合⇒義務であり(不履行の場合)法的責任発生、と②してもしなくてもいい場合(義務ではないプラスアルファ。各人の工夫と裁量。)の区別を意識する必要。
①法的レベルと②法律外(社会的責任等)のレベルの区別を意識する必要。
<●監査役について>
監査役の役割は取締役等の職務執行を「監査」(=法令・定款違反または著しい不当性の有無のチェックと指摘)すること。
取締役の裁量的判断一般の当否のチェック(妥当性監査)は含まれないが、①取締役の善管注意義務違反の有無は監査対象であり、②不当な判断は善管注意義務違反につながる⇒「妥当性」にかかわる事項についても監査権限は及ぶ。
<●内部統制(リスク管理体制)>
健全な会社経営のためには、①「リスク管理」が必要であり、②それは人が変わってもワークするよう「システム」で行う必要がある。だから、健全な会社経営を行う立場にある取締役には、その善管注意義務として、リスク管理体制を整備する義務がある。
金融商品取引法は、資本市場の適正性を確保するための法律であり、そこで要請される内部統制は、「情報開示の適正性」を確保するためのもの。それは、(健全な会社経営を行うべき)取締役の善管注意義務を具体化した、会社法上の内部統制とは趣旨を異にする。
リスク管理体制に基づいて職務執行に対する監視が行われている以上、特段の事情のない限り、監視義務を内容とする注意義務違反に問われることはない(ヤクルト株主代表訴訟控訴審判決 東京高裁H20.5.21(判例①))。(「監視義務」の履行も「システム」による。)
リスク管理体制構築義務について、「通常想定される不正行為を防止できる体制」を構築することが求められ、特別の事情が存在しない限りこれを超える体制を構築すべきことまでは義務付けられない(日本システム技術事件 最高裁H21.7.9(判例②))。
新たな法律、社会意識の変化、ITの進化、現行のシステムを超える不正
⇒内部統制システムは「改善」されていくべきもの。
<●不祥事発生の場合の対応の責任>
不祥事に関与していなくても、それを知った取締役・監査役がしかるべき行動をとらなかった場合、(多額の)任務懈怠責任が問われ得る(ダスキン事件 大阪高裁H18.6.9(判例③))。
不祥事発生時の対応については、経営判断の裁量の幅は限られる。
(農業協同組合の)代表理事に一任していたという「内部慣行」は監事(会社での監査役に対応)の免責のためのエクスキューズにはならない(最高裁H21.11.27(判例④))。
不祥事の兆候を知った場合、取締役に対して一定の対応を求めるほか、監査役としてもとるべき対応を注意深く検討する必要がある。
情報収集・調査等について専門家の知見を信頼した場合、当該専門家の能力を超えると疑われるような事情があった場合を除き、善管注意義務違反とはならない(江頭)。
<●経営判断の原則>
経営判断について善管注意義務に違反しないとされるためには、①当該行為が経営上の専門的判断にゆだねられた事項についてのものであること、②意思決定の過程に著しい不合理性がないこと、③意思決定の内容に著しい不合理性がないことの3つが要求される(アパマンショップ最高裁判決 H22.7.15)。
③の「意思決定の内容」は、価値判断の面がある⇒事後的に「不合理」だと断定されにくい。
②の「意思決定の過程」は、判断に必要な調査やリスク検討を行わない場合等、「不合理」と判断され得る。
<●不祥事発生時における監査役のスタンス>
監査役の役割は取締役等の職務執行を「監査」(=法令・定款違反または著しい不当性の有無のチェックと指摘)すること。つまり「非正常」をチェックし「正常」からの逸脱を阻止し、また「正常」に戻すこと。
⇒企業不祥事発生時の対応は、監査役の中心的職責。
<●私見>
企業不祥事が生じた場合「企業としてどうすべきか」「企業として何がベストか」の視点。
企業≠役員(企業のためにベストの選択が、役員にとって厳しい選択となり得る。)。
企業のための選択≠目先の痛みがない選択(ex.ダスキンの「積極的には公表しない」という選択。)。
「法的義務」に違反しなければ「法的責任」は問われない。
but法的責任がなくても、企業は批判にさらされるし、つぶれることもある。
企業は、社会や経済が、その企業が有用かつ生産的な仕事をしていると見なすかぎりにおいて、その存続を許されているにすぎない(ドラッカー)。
企業が存続を許されるためには「社会的責任」を果たさなくてはならない。
①役員は企業に対して責任を負う。②企業は社会的責任を果たさないと存続できない。⇒役員は社会的責任を意識する必要がある。
(法的責任の有無にかかわらず)企業が社会に与えた負のインパクトに対応することは、企業の「社会的責任」。
不祥事が生じた場合、事実の「隠ぺい」は不可。
「公表」は企業がコントロールする。
「消費者の利益>会社の(短期的)利益」という価値基準。
異物混入の脅迫状が届いた翌日に記者会見し、250万個の目薬を全品回収した参天製薬の対応。
原因究明と再発防止策の導入とその公表
企業不祥事が発生した場合、監査役は、①その「不祥事について」事実関係の把握に努めるとともに、②それに対する「取締役や調査委員会の対応について」監視し検証する(ステージ1)。
①企業に調査の適格性がない場合((i)取締役が不祥事に関与し「調査主体=調査対象」となる場合や(ii)利害関係故に適性な調査ができない場合等)、②企業による調査では毀損した信頼の回復が期待できない場合、「第三者委員会」の設置を勧告(ステージ2)。
①第三者委員会が要請される場合であるのに会社が動かない、あるいは②会社が立ち上げた第三者委員会の構成が不適切
⇒監査役自らが依頼し第三者委員会を立ち上げる(ステージ3)。
その場合「監査(=法令・定款違反または著しい不当性の有無のチェックと指摘)」のための第三者委員会と立ち上げという位置づけとなる。
「第三者委員会」の意味は、日弁連ガイドライン(企業等から独立した委員のみをもって構成)と監査役監査基準(一定の外部者が関与)では異なる。
①企業の内部調査委員会と②純粋の第三者委員会(日弁連のガイドラインのもの)の間に中間的なバリエーションがあり得る。
「委員会選択」についての取締役の選択が「著しく不当」(監査役が指摘する義務が生じる場合)に該当することは限られるが、会社にとって「ベスト」ではない選択であることは十分あり得る。
監査役が、企業にとってベストな対応方法について、積極的に「提言」すべき場面。
「委員会選択」についての考慮要素:
① 結果の重大性(被害金額・被害者の数・信頼性毀損の程度・上場廃止の可能性等)
② 関与者(従業員、役員、トップ)
③ 社会的インパクトの大きさ(マスコミによる報道)
等を考慮して「企業にとってベストな対応」を考える。
監査役の第三者委員会への就任:
監査役が善管注意義務違反を問われ得る場合(不祥事に関与、不祥事を知って対応せず)⇒就任不可。
社外のステークホルダーからの監査役への不信感(監査役も疑われている場合)⇒就任はしない方が良い。
第三者委員会の多面性:
① 費用がかかる。
② 会社からの「独立性」故に、信頼される。
③ 「独立性=会社はコントロールできない。
④ 調査結果は開示される⇒役員等の責任追及に利用され得る。
⑤ 第三者委員会の誤認定の可能性。
<●その他>
法律や社会状況がかわれば、役員の善管注意義務の具体的な中身も変わってくる。
法的責任の判断は明確なものではない。その不安定性と不明確性(裁判官によっても判断が異なり得る。)。⇒事後的に法的責任ありとされる「リスク」を減らす。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪・弁護士・シンプラル法律事務所)
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